中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者兼CEO(最高経営責任者)である任正非氏が18日、日経ビジネスなど日本メディアのインタビューに初めて応じた。中国政府のスパイ活動にかかわった疑いがかけられ、国際社会から厳しい視線を浴びるファーウェイ。任氏は疑惑を否定するが、この問題は日本企業にとっても対岸の火事で済まない。

 「30年の歴史において様々な顧客と向き合ってきたが、安全セキュリティ面の問題は何も生じていない。おそらく、今後もないだろう」

 「仮に(顧客に不都合なデータを政府から)提出するようにとの要求があった時には、我々の価値観に忠実に行動する。価値観とは顧客の利益に忠実であり、利益に反することはやらないということ。これまでもそのような要求はないし、今後求められても拒絶するということだ」

 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者兼CEO(最高経営責任者)である任正非氏が18日、日経ビジネスなどのインタビューに応じ、こう語った。同氏が日本メディアのインタビューに応じるのは初めてだ。

インタビューに応じるファーウェイの創業者、任正非CEO(最高経営責任者)
インタビューに応じるファーウェイの創業者、任正非CEO(最高経営責任者)

 ファーウェイを巡っては任氏の娘である副会長兼CFO(最高財務責任者)の孟晩舟氏が違法な金融取引の疑いで昨年末にカナダで逮捕されている。さらに今年に入ってポーランド法人の中国人社員がスパイ容疑で捕まったが、同社は即刻同社員を解雇し会社の関与を否定した。

 中国ではサイバーセキュリティ法が施行され、同国内で活動する企業に中国の情報活動への協力を義務付けている。米国政府などはファーウェイ製品の利用にはセキュリティーリスクがあると指摘しており、オーストラリアや日本など西側諸国で政府や通信インフラの調達から締め出す動きが加速している。

 世界を揺るがす米中の覇権争い。その結節点にいる任氏とは、一体どのような人物なのか。その経歴を紐解くと、二つの側面が見えてくる。

 まず、人民解放軍の工兵隊出身で、中国共産党の全国代表大会に招聘されたこともある共産党員だ。こうした事実が中国の伸長に警戒感を募らせる米国の不安を煽っていることは間違いない。

 一方、工兵隊の解散に伴ってリストラされた後、ビジネスで騙されて資金を失うなどの困難を乗り越え、裸一貫から巨大企業を築き上げたカリスマ経営者という顔もある。非上場ながら、従業員のみがファーウェイ株を所有できるようにするなど、独特のガバナンス体制を持つ組織を作り上げた。ファーウェイの現役社員とOB以外は同社株を持っておらず、「政府からの資金は入っていない」(任氏)という。

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