日本たばこ産業(JT)は加熱式たばこの新製品を発売する。既存品を改良して吸いごたえを高めたタイプと、競合も手掛ける高温でタバコ葉を加熱するタイプを用意した。加熱式たばこは米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の「アイコス」が市場に君臨し、JTは出遅れていた。アイコスは米国で販売の認可申請をしているが認められていない。PMIの製品改良が遅れる間隙を突いて巻き返したい考えだ。

JTが1月29日に発売するのは、「プルーム・テック」を改良した「プルーム・テック・プラス」と高温タイプの「プルーム・テック・エス」。高温タイプはアイコスのほか、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の加熱式たばこ「グロー」があり、JTは新たに参入する。プルーム・テックの販売店とオンラインで販売し、2019年中にコンビニエンスストアなどを含めた全国展開を目指す。
JTが2種類の新商品を投入する一方で、PMIの動きは静かだ。昨年11月に発売した「アイコス」の新型製品はバッテリーを改良して連続喫煙が可能になったが、タバコ葉の加熱機構に大きな変化はない。業界関係者は「革新的な新製品を出してくると警戒したが、拍子抜け」と話す。
PMIがアイコスの改良に踏み切れなかった背景にあるのは、米国での発売を目指して2年前、FDA(食品医薬品局)に申請したアイコスの販売認可だ。PMI関係者は「申請が通る前にアイコスの構造を大幅に変更することは難しい」と内情を打ち明ける。FDAは健康への悪影響を計りかねているようだ。
PMIでFDAの販売認可待ちが続く中、JTは「プラス」で、既存商品の課題であった紙巻きたばこのような吸いごたえを改善させた。「エス」では、アイコスやグローのユーザーが不満を感じていた「焼き芋が焼けたような特有な匂い」を低減させたという。

JTが18日発表した国内の紙巻きたばこの18年の販売数量は前年比11.7%減の820億本だった。加熱式たばこへのシフトが進むなか、JTの岩井睦雄副社長は「19年は反転攻勢の年。新商品を通じて、加熱式たばこ市場でのシェア拡大を狙う」と話す。日本市場で圧倒的なシェアを握るPMIの足踏みをチャンスにできるだろうか。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?