2019年の春季労使交渉(春闘)がまもなく始まる。「秋に消費税率10%への引き上げを予定しているのだから、2%分の賃上げは期待できるだろう」。そんな見立ては早計だ。昨年末からの株価乱高下や怪し気な世界経済を背景に、例年以上に渋い回答を予想する声が多い。今年の交渉で経営側がより意識し、予防線になりそうな数値は何だろう。

18年の大企業の賃上げ率は2.53%と高水準だったが……(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
18年の大企業の賃上げ率は2.53%と高水準だったが……(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 経団連は1月下旬、春季交渉の指針をまとめる。中西宏明会長は15日の記者会見で「業績と各社の事情に応じて賃上げしていこうじゃないかと、(準備を進めている指針には)書いている」と賃上げの機運を維持していく考えを強調した。

 もっとも、雲行きは怪しい。まず消費税との関連について触れておくと、経営側の基本スタンスは「増税に備えて(賃上げを)先食いするつもりはない」(大手製造業)。増税時期が10月だということもあって、4~9月までの半年分まで給与を上乗せする訳にはいかないという意見が現状では多い。むしろ、足元での景気・経済と企業業績の先行き懸念が春の交渉で前面に出る可能性が高い。

ベアのインパクトは「1.7倍」

 企業にとってベースアップ(ベア)のインパクトは月額賃金負担の「1.7倍」。経営側が賃上げに慎重になる根拠の数字の一つだ。従業員の給与を一律に底上げするベアは当然、夏冬のボーナスや退職金にも影響し、医療・年金など社会保障の企業負担にもつながる。ベアによる月額賃金の負担増以上の人件費が必要で、その倍率は中小企業を含めると1.7倍、大企業に限れば1.9倍となる。ベアはベアだけにあらず。先行きが見えにくいご時世だけに「従業員の頑張りは分かるが、将来に渡って企業の負担が増す」という議論が勢いを増すだろう。

1.8%分のゲタにも注意

 今後の交渉過程で、政権側からも企業側からも様々な「数字」が飛び出すだろう。集中回答日である3月中旬以降の「仕上がりの数字」にも注意が必要だ。経団連がまとめた18年の大企業の賃上げ率は2.53%と20年ぶりの高水準だが、これも解きほぐす作業が欠かせない。2.53%のうち、年齢に応じてほぼ自動的に給与が上がる定期昇給の部分が実に1.8~1.9%ほどある。つまり、ベア相当部分は1%に満たない。交渉で勝ち取った数字、仕上がりの数字、本当に消費に効く数字、誰かを守るための数字……。それぞれにギャップがある点を見逃してはいけない。

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