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 米国のトランプ大統領は中国に対する経済政策を見直すことで、米国内の景気の足腰を盤石にし、11月の大統領選挙に臨む構えなのだろう。米中両政府は日本時間の1月16日未明、これといった波乱もなく2019年12月に決められた内容の通りに、米中貿易協議を巡る「第1段階」と呼ばれる部分合意の文書に署名した。18年7月に米中貿易摩擦が激化して以降、初めてとなる制裁緩和は、両国の貿易交渉において大きな一歩となる。

 しかし、ここに来て米中関係をかく乱するもう1つの要因が浮上している。1月11日に実施された台湾総統選で、中国の「一国二制度」を拒否する民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)氏が、親中派の野党国民党が擁立する韓国瑜(ハン・グオユー)氏を大差で破り、当選したからだ。

台湾総統選で再選された蔡英文氏(写真:ZUMA Press/アフロ)

 米国との距離を縮める蔡氏に対し、中国がよい顔をするはずがない。事実、中国国営の新華社通信は、蔡氏の当選について「不正行為や抑圧、脅迫などの汚い小細工を用いて得票し、身勝手で強欲、邪悪な本性を完全に露呈した」と批判。加えて圧勝には「外部の闇の勢力によるコントロールがあった」と分析した。この「闇の勢力」とは、暗に米国を指しているとされている。

 だが、収拾のつかない香港の混乱と、中国政府の抑圧的な態度が多くの台湾人に警戒心を与え、蔡氏の圧勝につながったのは言うまでもない。それに加えて、米中の経済関係の悪化が蔡氏の躍進を生み出したといっても過言ではない。

 米中両国の貿易摩擦が激化するにつれて、半導体やその他の電子部品などを中心に、多くの企業がアジアにおけるサプライチェーンの見直しを余儀なくされた。その結果、中国に生産拠点を持つ多くの台湾企業が台湾に回帰したことで、対中国本土向けの輸出は減り、代わりに対米輸出が増加している。

 台湾行政院主計総処が19年11月29日に発表した同年第3四半期の実質GDP成長率は前年同期比2.99%だった。20年通年の成長率予測も、2.58%から2.72%へと上方修正している。こうした堅調な台湾経済が、現職として総統選に臨んだ蔡氏に追い風となった。