
ラメ入りパープルに塗装されたド派手なカスタムカー、リフトアップされた大迫力の多目的スポーツ車(SUV)、そしてコンパニオンに群がるカメラ小僧──。1月10~12日、千葉県の幕張メッセで国内最大のカスタムカーの祭典「東京オートサロン2020」が開催された。3日間の合計来場者数は33万6060人と過去最高の動員を記録。「クルマ離れ」が語られる中、ここ10年で来場者数は10万人増え存在感が高まっている。

カーショーの「本家」といえば2年に1度開催される東京モーターショー。ただ、入場者はここ数年100万人を切り回を追うごとに減少していたほか、海外メーカーが相次いで参加を取りやめるなど、かつての勢いは失われかけていた。19年秋は「来場者数100万人」を目標に、電機やITなど異業種を巻き込んで大きくテコ入れ。キッザニアなどファミリー向けのブースを設けたことも奏功し、130万人を達成した。

モーターショーが、先端技術やコンセプトカーなど「未来」を見せる一方、オートサロンは今にも走り出しそうな改造車がズラリと並ぶ展示会だ。会場では商談を行うことも可能。海外からの来場者も多く、タイから訪れたというディストリビューターの男性は「見たことのない車が多くとても楽しいよ」と目を輝かせた。

かつては、アフターパーツを含めた改造車の展示が主だったオートサロン。ただ、自動車メーカーが参加し始めたことで風向きが変わったという。ホンダは今回、昨年レッドブル・ホンダとして参戦したF1マシンを展示。トヨタ自動車はWRC(FIA世界ラリー選手権)用の「GRヤリス」を世界初公開するなど、モータースポーツを通じたプロモーションやブランディングの場として定着しつつある。10日のプレスカンファレンスにはトヨタの豊田章男社長がドライバー名「モリゾウ」として登場。モータースポーツの活動についてイキイキと語る姿が印象的だった。

改造マニアだけでなく、モータースポーツのファンに向けてもアピールするなど、まさに多種多様な「車好き」を一堂に集めようという方針だ。他にも、日産自動車の特装車などを手がけるオーテックジャパン(神奈川県茅ヶ崎市)が出展していたのは、フルフラットになるシートを搭載した「セレナ eパワー」。近年、アウトドア好きを中心に人気を集める車中泊に対応したモデルだ。自分の好みに合わせて車内空間をカスタマイズすることも多い車中泊は、オートサロンのコンセプトともマッチする。
改造車好き、モータースポーツのファン、車中泊愛好者、そしてカメラ小僧まで幅広いニッチ需要に応えるオートサロンの盛況はまだ続きそうだ。

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