年明けに世界の株式市場を襲った「アップル・ショック」は米アップルが2018年10~12月期の業績見通しを下方修正したのがきっかけだった。昨年秋に投入したスマートフォン(スマホ)「iPhone」の新型3機種の販売が想定よりも下回り、19年1~3月期の生産台数を当初計画から10%程度減らすとも報じられている。

iPhoneの販売不振が伝わる(写真:ロイター/アフロ)
iPhoneの販売不振が伝わる(写真:ロイター/アフロ)

 2007年にiPhoneを発売し、スマホ市場を切り開いてきたアップル。ライフスタイルを一変させ、昨年8月には時価総額が1兆ドル(約110兆円)を超えた。それでも販売不振に見舞われるのは、韓国サムスン電子や中国・華為技術(ファーウェイ)などとの競争激化に加え、米中貿易戦争のあおりで、収益源の中国の経済が減速していることがある。

 そんな今のアップルを、米ゴールドマン・サックスのアナリスト、ロッド・ホール氏は12年前のフィンランドのノキアの姿に重ねる。

 ノキアは1990年代に携帯電話事業を始め、独自のOS(基本ソフト)「シンビアン」を搭載して機能を進化させてきた。2007年には世界市場での占有率が5割を超えて絶頂期に。だが、市場での普及率が高まれば、新規顧客の開拓が難しくなるもの。販売規模を維持、拡大するには買い替え需要を掘り起こすしか手立てがなくなる。

 ノキアにとっての誤算はリーマン・ショックによる世界経済の減速だった。買い替えが進まなくなり、長期低迷期に入った。

 iPhoneも定期的に新機能を搭載した新商品を出すことで、新規顧客の開拓と、既存顧客の買い替え需要を掘り起こしてきた。そして、「iPhoneの普及率が高まった今、マクロ環境の影響を以前より受けやすくなっている」との見方をホール氏は投資家向けに示している。 

 もちろん、今と12年前では違いもある。ノキアにとってのiPhoneのように、iPhoneに代わる革新的な携帯端末はまだ登場していない。ノキアの凋落は、スマホへの切り替えが遅れた面も大きい。

 アップルには音楽配信などサービス事業という収益基盤もある。アップルは18年10~12月期もiPhone以外の製品やサービスの売上高が前年同期比で19%伸びたとしている。

 それでも、売上高の6割以上を占めるiPhoneの販売動向がアップルの今後を左右するのは間違いない。中国だけでなく、世界経済の先行きが見通しにくくなるなか、アップルは踏みとどまれるか。正念場だ。

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