国産初の電子辞書を1979年に発売したことで知られるシャープが1月23日に最新機種を発売する。翻訳機能や辞書機能が充実するスマートフォンに押される形で電子辞書の市場規模は縮小しているが、それでもシャープは製品改良を続ける。国産1号機メーカーの意地が垣間見える。
23日に発売する電子辞書の新機種は高校生モデル2機種と大学生・ビジネスモデル1機種の計3機種を展開。折り畳み構造で、画面とキーボードをつなぐ部分が360度回転し、スマートフォンのように縦型としての使いやすさも訴求するデザインにした。

今からさかのぼること40年ほど前。シャープにその後の電子辞書となる電子翻訳機のアイデアを持ち込んだ人物が、ソフトバンクグループを率いる孫正義会長兼社長だ。当時19歳だった孫氏は、シャープの副社長だった佐々木正氏にアイデアを持ち込んだ。提案を受けた佐々木氏は、孫氏の将来性とアイデアに共感し、現場に開発を指示。そして電子辞書の国産1号機となる電子翻訳機を1979年11月に発売した。

孫氏もソフトバンクグループの会社ホームページに掲載した社長メッセージで、電子翻訳機について言及している。「19歳の時、人生で初めての発明品として、音声付き電子翻訳機を開発しました。後の電子辞書のベースとなったもので、世界中の人々に使われました」と振り返っている。
シャープは、64年にオールトランジスタ電卓を、73年にポケットタイプの液晶電卓をそれぞれ世界で初めて発売。これらの電卓の機能も応用して、孫氏のアイデアも交えながら、電子辞書の国産1号機の発売につなげた。
だが、現在の電子辞書の市場動向(台数ベース)に目を向けると、翻訳機能や辞書機能が日に日に充実するスマートフォンに押される形で、ピーク時の半分以下にまで低下。2007年に約290万台だった市場は、近年は120万台で推移している。ただ、シャープによると、機能が充実した高校生向けの上位モデルは18年度に9%だったシェアが今年度は20%程度まで増える見通しだ。20年度は小学校3年生から英語が必修になることもあって、同社担当者は「小・中学生は注目のターゲットだ」と語る。
国内の電子辞書市場では、シェアトップのカシオ計算機と2番手のシャープが販売競争を繰り広げる。シャープ担当者はスマートフォンとの差異化について「その場で翻訳などをするにはスマートフォンは便利だが、学習するには電子辞書が適している」と学生向けの市場拡大の可能性を強調する。
今回シャープが発売する電子辞書の市場想定価格は、税別で3万8000~4万2000円程度。機能強化を続けることで、小中学生から高校生、さらには子供をもつ親にアピールし続けたいという。国産1号機を生み出した「老舗」の意地が、スマートフォン全盛の市場で異彩を放つ原動力かもしれない。
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