「5Gの次の標準を狙う。でも華為技術(ファーウェイ)のようになってもいけない」
NTTは2020年1月7~10日に米ラスベガスで開催された世界最大のデジタル技術見本市「CES」に初出展し、次世代通信技術「5G」の次の主流になると見られている光を用いた自社開発の通信技術を世界へ売り込んだ。この技術は同社が1960年代から地道に開発を続け、19年にようやく実用化にめどがついた「血と汗の結晶」だ。

20年に一気に普及が進むと見られる5Gは、基地局と端末との情報通信を高速化する技術として注目されている。だが、データセンターや各端末の中の情報のやりとりは、銅や金などで形成された配線で処理・伝達されている。半導体チップの中も同様だ。素材が金属であるため、熱抵抗が起きて消費電力の削減には限界があった。また5Gがネットワークの中で使用しているインターネット回線は、情報をパケット化して送信するため、送信速度に限界があるのも課題だった。
これに対してNTTの新技術では、金属ではなく光を伝送手段として使うため、消費電力の削減や伝送スピードの向上が可能だ。通信手法もインターネットではない新方式を導入することで、電力効率は100倍、伝送容量は125倍向上し、伝送の遅延も200分の1に削減することが可能だとみている。NTTは光を使った伝送技術をすでに確立しており、今後はチップ周辺やチップ同士、さらにチップ内部の微細な伝送の実用化に取り組む。
新技術は、自動運転など瞬時にセンサーで認識した情報を取得してAI(人工知能)で処理し、実行する場合や、走行中の車両が周囲の車両に自身の位置情報を発信して衝突を防ぐといったコネクテッドカー(つながるクルマ)の領域で大きな差を生む。NTTはすでにコネクテッドカーに関してトヨタ自動車と共同で実証実験に取り組んでおり、2019年12月に、先行車両の情報を後続車両に15秒で伝達できた成果などを報道陣に公開した。この高速化に新技術は貢献できるという。
「今のところ、ここまで成果が望める通信技術がなく、競合は現時点ではいない」とNTTの研究企画部門R&Dビジョン担当統括部長の前田裕二氏は胸を張る。5Gの次の通信規格が日本から生まれる――。こんな期待も高まるが、懸念もある。同氏の冒頭の発言だ。
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