全1751文字
ゴーン氏はレバノンのワイナリーにも出資している(写真:Abaca/アフロ)

 保釈中の身ながら、世界を「あっ」と言わせる逃走劇で日本からレバノンに駆け込んだ元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告。日本時間の1月8日午後10時に記者会見を開き、自らが起訴された一連の事件について主張を展開するとみられる。ゴーン氏は日本でも2019年4月にビデオメッセージで自らの主張を公開していた。しかし、今回の会見では日本の司法当局や日産への批判のトーンが一段と高まることが予想される。

 ゴーン氏は自らの容疑が「クーデター」によるものだと主張しており、記者会見では関与した日本政府の関係者や日産幹部などの実名を含めた何らかの証拠を提示するとみられる。具体的内容は記者会見を待つしかないが、そのヒントは18年4月から5月にかけて日産社内で飛び交っていたメールにある。日経ビジネスが19年4月に報じた「ゴーン氏宛てメール入手 政府、日産・ルノー統合阻止へ暗躍か」では、日本政府が仏ルノーと日産との経営統合を阻止しようと動き、経済産業省が仏政府向けの「覚書」を準備していたことを報じた。

 編集部が独自に入手したゴーン氏宛の内部メールでは、日産とルノーの関係について、西川広人・前社長や川口均・前副社長などが日本政府と協議していた事実が浮かび上がった。やりとりには、その後東京地検と司法取引し、ゴーン氏の不正を告発したとされるハリ・ナダ専務執行役員も加わっている。メールには経産省の製造産業局長だった多田明弘氏や世耕弘成・経産相(当時)の名前も出るなど、政府が日産・ルノー間の問題に深く関与していた様子がうかがえる。そしてこの一連のやり取りから半年後、ゴーン氏は逮捕された。

 ゴーン氏は日本ではこうした事実の公表に踏み切らなかったが、一転して強気の構えで記者会見に臨むことになる。その背景には、レバノンという安住の地へ帰ったことの安心感がありそうだ。「レバノン人は世界中でカネを稼いで母国に帰ってくる。ゴーン氏の日本からの逃亡も悪いことだとは受け止められていない。ゴーン氏にとっては都合のいい国」。中東、イスラム世界を研究している東京大学の池内恵教授はこんな見方を示す。