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 地中海に面した交易の拠点で、古くから商人の国としても知られるレバノン。1975年から1990年にかけて内戦が続いたこともあり、海外に渡って財をなすレバノン人は少なくない。その財をレバノンにいる親族や地域などに分配することで母国での存在感を高めるという。レバノン国籍を有しながら、フランスや日本で経営者としての名声を築いてきたゴーン氏もその一人だ。レバノンの大学に寄付をするなど、自らの財を母国に還流させる「有力者の一人」(池内教授)とみられている。妻のキャロル容疑者、さらに前妻もレバノン出身。ゴーン氏は休暇をレバノンで過ごすこともあった。

妻も前妻もレバノン生まれ

 レバノンが敵国と見なすイスラエルにゴーン氏が過去複数回渡航し、経済的な取引をしたことを第三者の弁護士が告発するといった動きもあるが、「アンチイスラエルは建前にすぎない」(池内教授)。日本政府も大久保武・駐レバノン大使がレバノンのアウン大統領と会談し、真相究明に協力を求めるなど、ゴーン氏の身柄引き渡しに圧力を強めている。しかし、ゴーン氏はレバノンの政権中枢に太いパイプを持っているとされ、身柄が日本に引き渡されるのは現実的に考えづらい。

 ゴーン氏はレバノン以外にもフランス、ブラジルの国籍も有する。それでも逃亡後の「安住」を考えたとき、国や民族の成り立ち、政府とのつながりなどから行き先はレバノン以外にはなかったといえる。

 安住の地で強気になったゴーン氏は記者会見で日本の司法制度を批判するなどして、国際世論を味方につけたいはずだ。しかし、もはや日産や仏ルノーのトップを追われた存在で、裁判を前に日本から逃亡まで犯した人物であるという事実は重い。安住の地で強気になれたところで、ゴーン氏は一度は「終わった」人物であることは忘れてはならない。

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