儲(もう)かるのは当然

日本の自動車メーカーとして初めてインドに進出した先駆者でもある。写真は、2012年、クジャラート州の工場建設地の視察風景(写真:AP/アフロ)
日本の自動車メーカーとして初めてインドに進出した先駆者でもある。写真は、2012年、クジャラート州の工場建設地の視察風景(写真:AP/アフロ)

当時と比べれば、今のインドの事業環境は随分良くなったと。

鈴木:以前は昔の国鉄(日本国有鉄道)のようなもので、労務や経理、部品メーカーの選定や販売店管理までインド政府が口を出して大変だった。でも、和解後に出資比率を54%に引き上げてからは何も言わなくなりましたね。そこから大整理です。部品メーカーも販売店も整理した。

 インドで何かやろうと思ったら最初から51%以上の株を持つことです。それでエブリシング、ザッツ・オールですよ。

 マルチは2003年7月に上場して政府株を市場で売却しました。今、政府の持ち分は約10%。これから政府がマルチ株を保有しようが売却しようが、8月以降は政府から来ている1人の非常勤取締役はいなくなります。

マルチの2005年度上半期の税引き前利益率は12.8%と高く、年間では約300億円に上ります。スズキの連結利益が約1000億円だから、その3割に相当します。親孝行の子会社になりましたね。

鈴木:マルチが儲(もう)かっているのは当然なんですよ。23年前に作った、「古い」という形容詞が3つも4つもつくような車種を作り続けていて、エンジンも基本は変えていない。それが今も全販売台数の2割くらいを占めているんです。償却し切った設備で作っているわけだし、進出したのが20年以上前だから、土地から建物から全部安くできているでしょう。

ただ、最近では韓国の現代自動車や地場のタタ・モーターズの追い上げも激しい。今年10月に稼働予定の新工場はシェア50%を守るための戦略拠点というわけですか。

鈴木:今のマルチが年産58万台で、新工場は今年10万台から始めて2年後をメドに25万台まで引き上げる。この時点で年産合計80万台というところです。将来的には新工場だけで100万台作れるような用地の手当てはしてあります。

 でも、トヨタ自動車やホンダ、欧米系などを含めて、インドにはもう12もの自動車メーカーが出そろったんですから、市場の過半を取り続けるなんてことは不可能ですよ。これからは商品力の競争になる。旧国鉄みたいな会社を引き継いで、23年前のモデルを売って儲(もう)けてきたから、マルチ社内はどうしてもたるんでいる。だから第2工場は最初、別会社にしてマルチと競わせて緊張感を持たせようとした。税法上の問題などで結局は同じ会社にしたけれど、2つの工場は完全に分離して人事交流もやらないつもりです。

次ページ 戦後間もない日本と同じ

この記事は会員登録でコメントをご覧いただけます

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題