<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは:</span><br>「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは:
「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 AI(人工知能)やサブスク……。新しい技術や急成長するビジネスが登場するたびに、世間にはバズワードが流布する。だが、持続的に成長していくには、ブレない経営の軸が必要だ。「同時代性の罠(わな)」に惑わされないための、60分の思考訓練。毎回、注目企業をケースに、一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家・杉浦泰氏が解説する。

 最終回となる第6回のテーマは「スズキ」。織機メーカーから始まり、オートバイ、自動車へと業容を広げ、日本の軽自動車市場をリードしたスズキ。インドでは、日本の自動車メーカーとして初めて進出した先駆者として、約5割と圧倒的なシェアを誇る。小型車では確固たる地位を確立した同社の経営を、過去に遡って分析する。

 今回はウェビナーに先立ち、1993年に日経ビジネスに掲載した第2特集「スズキ、泥くさく疾走」を再掲載する。自動車各社が業績悪化に悩んでいた1990年代前半。その中で徹底したローコスト経営で収益を確保する同社と、当時、社長だった鈴木修氏の強力なリーダーシップを詳述している。

■こんな方におすすめ
+仕事の意思決定において、ブレない思考を養いたい方
+スズキの経営に関心のある方
+楠木氏、杉浦氏の著書『逆・タイムマシン経営論』を読んだ方、もしくは興味がある方
+製造業の現場に勤務している方
+企業の歴史、産業の歴史に興味がある方

>>参加を申し込む

■開催概要
テーマ:ケースで学ぶ「逆・タイムマシン経営論」
    スズキはなぜ良品廉価を守り続けられるのか(仮)
開催:2021年6月30日(水) 20:00~21:00
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員:無料(事前登録制、先着順)

※有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

20:00 オープニング
20:05 スズキの戦略と事業環境の変遷を、創業当時にまで遡りながら分析。「逆・タイムマシン経営論」の視点から、楠木氏、杉浦氏が同社の強さを分析する。
20:45 質疑応答
21:00 クロージング

■講師

楠木建(くすのき・けん)
一橋ビジネススクール教授
1992年、一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、一橋大学商学部専任講師、同助教授、同大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授を経て、2010年から現職

杉浦泰(すぎうら・ゆたか)
社史研究家兼ウェブプログラマー
1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、現在は社史研究家兼ウェブプログラマーとして活動。社史研究は2011年からスタートし、18年1月から長期視点をビジネスパーソンに広める活動を開始(ウェブサイト「決断社史」)。現在はウェブサイト「The社史」を運営する

■教材
+楠木建・杉浦泰著『逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知』(日経BP)
逆・タイムマシン経営論 第1章 飛び道具トラップ
逆・タイムマシン経営論 第2章 激動期トラップ
逆・タイムマシン経営論 第3章 遠近歪曲トラップ

■第2特集
スズキ、泥くさく疾走
徹底した合理化、積極的な海外展開
強力なリーダーシップゆえの脆さも

 自動車各社が業績悪化に悩む中、徹底したローコスト経営で収益を確保する。鈴木修社長の強力なリーダーシップの下、合理化、海外展開を加速させるが、社長個人の経営手腕と個性に依存した組織には半面、脆(もろ)さも垣間見える。

*「日経ビジネス」1993年05月10日号より。固有名詞や肩書、数字などは掲載当時のママ。読みやすさや時代背景を考慮し一部表現を改めた部分があります。

 3月8日(日付は掲載年のもの=1993年)、日本工業技術振興協会の研究グループがスズキの主力工場である湖西工場(静岡県湖西市)を見学した。リーダー役の下川浩一・法政大学経営学部教授以下、自動車各社の生産技術担当者を中心とした総勢11人が、スズキの“秘密”を暴こうと生産ラインに熱い視線を投じた。

 日産自動車、ダイハツ工業が赤字に転落するなど自動車各社が極端な収益悪化に見舞われる中、スズキの健闘は光る。売上高営業利益率2.7%(1992年9月中間期)はトヨタの1.3%(92年12月中間期)を上回り、自動車メーカー中最高。「何か特別なシカケがあるのではないか」と参加者は期待した。

 湖西工場の設立は70年。他メーカーの最新鋭工場で活躍する大がかりな自動化設備は、ここにはほとんど見当たらない。一見したところ、ごく普通の自動車工場だ。「特に変わったところはないし、何で高収益を上げられるのかまるで分からない」と、ある大手メーカー社員は感想を漏らした。

「無駄ガネは一銭も使わない」上から下まで意識徹底

 「軽自動車でまともに利益が出せるのはスズキただ1社」と自動車業界を担当する証券アナリストは口をそろえる。トップシェアを握るスズキ以外にダイハツ、富士重工業、三菱自動車工業、本田技研工業が軽自動車を自社生産しているが(マツダはスズキから部品の供給を受け、組み立て生産)、スズキに次ぐ軽自動車第2位のダイハツでさえ「軽ではほとんど儲(もう)けにならない」(同社役員)。

 軽のセールスポイントは安さにある。だが、「エンジン排気量660ccの軽自動車といえども、使う部品や生産工程は、倍の排気量を持つ小型車と大差ない」と、富士重工業で生産技術を担当する杉本康夫常務は言う。小さなクルマほど採算に乗せるのは難しい。

 「儲からない」はずの軽を主力に据えながら、なぜスズキは業界随一の利益率を達成できるのか。

 工場から販売、管理部門まで、あらゆるオペレーションがローコストを指向しているため―結論から言ってしまえば、あまりにも当たり前過ぎる理由だが、注目すべきはその徹底ぶりだ。

 昨年夏、不況対策としてトヨタ自動車が課長クラスの出張時のグリーン席利用を取りやめたニュースに接して、スズキの管理部門の課長は「びっくりした」。トップ企業のシブチンぶりを、ではない。トヨタの課長がそれまでグリーン席を利用していたことを知って驚いたのだ。スズキでは以前から社長しかグリーン席を利用できない。

 それどころか、スズキの社員は出張に際して“特殊なチケット”を使う。例えば、本社所在地の浜松から東京まで新幹線を利用する場合、浜松-静岡、静岡-小田原、小田原-東京の3区間に分けて購入した回数券を総務部から支給される。東京-浜松間の回数券よりも1回当たり片道300円安くなるからだ。この手のエピソードならスズキには事欠かない。

 人件費削減のため、乗用車メーカーで唯一、本社に受付に従業員を置いていない。オフィスの照明は蛍光灯1本1本にスイッチひもが付いており、席を空ける時はこまめに消灯する。書類を減らすため、課長クラスでも文房具が入るくらいの小さな引き出しが1つあるだけの机を使う。共用の書類棚はすべて扉を取り外してある。扉があると要らない書類まで死蔵してしまうからだ。

 生産現場の改善提案よろしく管理部門にも経費削減のための提案制度があり、無駄ガネは一銭も使わない、という意識が上から下まで貫徹している。

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