1993年5月10日号の日経ビジネスの特集では、軽自動車で業界随一の利益率を達成している同社の徹底したローコストオペレーションについて詳述している。また、他の日本メーカーが進出していなかったインド、パキスタン、ハンガリーなどの途上国にいち早く生産拠点を設け、競争力の源泉としていることも描いている。

「小さく、軽く、少なく」--スズキは今年度の経営計画の中でこんなスローガンを掲げている。「小さく」するのはもちろんコスト。残りの二つはそのための方法論だ。
「軽く」の意味するところは「スリム化」などといった抽象的な概念ではない。工場設備の重量を物理的に軽くしてしまおう、と言うのだ。部品の運搬具や治具、組み立て途中の自動車や部品をつり上げる搬送リフトなどを軽量化し、作業能率の向上と電気代の節約を狙っている。リフトはつるし方を工夫してバランス用の重りを不要にし、運搬具はパイプ径を細くするなど、細かい工夫を積み重ね、全工場でこれまでに500トンの重量を取り除いた。
出所:日経ビジネス1993年5月10日号 第2特集 スズキ、泥くさく疾走

1980年代初頭には5000億円ほどだった売上高を、インド市場などの開拓などで3兆円を超える規模に成長させたのが鈴木修会長だ。ただ、昨今は、インド市場の低迷などもあり、厳しい状況を迎えている。
2020年1月13日号の日経ビジネスに掲載された編集長インタビューで、100年に1度の大変革期といわれる業界の行く末をどう読むのかの問いに、「チャレンジするチャンスだ」と応じ、改善を完遂したいと熱き思いを語っている。
責任をとってすぐ辞めることも選択肢の一つとしてあるでしょうが、経営責任を果たすためにも過ちを直す努力が必要だと思います。
責任があったらすぐ辞めてしまうトップもいますが、それではただほったらかしになる。私の経営哲学は一般常識とは異なるのかもしれませんが、人が何を言おうと貫き通してみせたいですね。
出所:日経ビジネス2020年1月13日号 編集長インタビュー スズキ会長鈴木修氏 「経営者人生、ここまで51点」

大きな課題に直面するスズキ。6月30日に開催するウェビナーでは、日経ビジネスに掲載してきた膨大な数のスズキ関連の記事などを生かし、同社がどのように業界に先駆けた海外展開などの道を切り開いてきたのか、その経営のブレない軸を深掘りする。一橋ビジネススクールの楠木建教授と社史研究家の杉浦泰氏、そして日経ビジネスの担当記者による議論をお楽しみください。
この記事はシリーズ「ケースで学ぶ「逆・タイムマシン経営論」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。