
利益は「結果」ではない
企業の成長の第一歩は何でしょうか。それは利益です。と言うと利益は結果だろうと思われるかもしれません。でも、実は逆なんです。最初に利益を上げることこそ大事なのです。
それも2、3%なんていう利益率ではダメ。2ケタは必要です。それだけ利益を上げれば、次の設備や研究開発、ヒトへの投資が可能になり、それによって売上高を伸ばせる。売上高を伸ばして利益を上げるのではないのです。利益を上げるから売り上げも増やせるのです。何としても利益を上げること。それが成長の第一歩なのです。それを「財務価値」と呼びましょう。
そしてその過程では、「なぜ、利益が出ないのか」「なぜ儲(もう)からないのか」を自ら考え、動く社員を育てることも大事です。難しいことをするわけではありません。コスト、利益などへの社員の意識を高め、士気を上げるのです。これが「人材価値」の向上です。
財務価値を上げ、人材価値を高められれば、何ができるようになるでしょう。それは「顧客にとっての価値向上」です。新製品・新技術をより安い価格を提供できる、あるいは新興国など、これまで日本電産の製品を届けられなかった新市場の顧客に製品を提供できるようになるということです。
ここまでできれば「株式市場での価値」も上がり、M&Aもしやすくなります。当然、よりいい人材も、低いコストの資金も集まりやすくなります。そして、この価値創造の循環が次の利益をもたらすのです。この輪を切らないためにも、さらにまた利益の積み上げが必要になるのです。
では、まず第一歩である財務価値を上げるために何をすればいいのでしょう。私は1973年に日本電産を独力で創業し、これまでに国内外で約30社を買収してきました。
ですが、日本ではなかなかいい会社は売ってもらえません。買収した先のほとんどは業績の悪化した企業。利益は、そんな企業の立て直しのためにも必要なのですが、実際は儲かっている企業も共通した問題を抱えているものです。最初に取り組まなければいけないのは損益計算書の改革、つまりコスト構造の徹底したつくり直しです。
日本電産が取り組んでいるのは、「Kプロ」「Mプロ」と社内で呼ぶ活動です。このうち、Kプロは「経費削減プロジェクト」の略で、人件費、材料・外注費などを除く、事務用品費、光熱費、出張費、物流費、交際費などの経費を削減する活動のこと。売上高1億円当たり500万円以下という指標を設けていますが、大抵の会社はその2倍ぐらいはあるはずです。
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