「日経ビジネスLIVE」とは:「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 AIやサブスク……。新しい技術や急成長するビジネスが登場するたびに、世間にはバズワードが流布する。だが、持続的に成長していくには、ブレない経営の軸が必要だ。「同時代性の罠(わな)」に惑わされないための、60分の思考訓練。毎回、注目企業のケースについて、一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家・杉浦泰氏が解説する。

 第4回のテーマは「ヤマト運輸」。宅配便市場を切り開き、物流のイノベーターとして新しい生活スタイルを生み出してきた同社の経営を、過去に遡って分析する。

■こんな方におすすめ
+仕事の意思決定において、ブレない思考を養いたい方
+ヤマト運輸の経営に関心のある方
+楠木氏、杉浦氏の著書『逆・タイムマシン経営論』を読んだ方、もしくは興味がある方
+日ごろから、宅配便を利用している方
+企業の歴史、産業の歴史に興味がある方

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■開催概要
テーマ:ケースで学ぶ「逆・タイムマシン経営論」
    ヤマト運輸はどうして「物流イノベーター」になれたのか(仮)
開催:2021年4月27日(火) 20:00~21:00
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員:無料(事前登録制、先着順)

※有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

20:00 オープニング ※(講師紹介、講座紹介)
20:05 ヤマト運輸の戦略と事業環境の変遷を、宅配便のサービススタート時にまで遡りながら分析。「逆・タイムマシン経営論」の視点から、楠木氏、杉浦氏が同社の強さを分析する。
20:45 質疑応答
21:00 クロージング

■講師

楠木建(くすのき・けん)
一橋ビジネススクール教授
1992年、一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、一橋大学商学部専任講師、同助教授、同大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授を経て、2010年から現職

杉浦泰(すぎうら・ゆたか)
社史研究家兼ウェブプログラマー
1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、現在は社史研究家兼ウェブプログラマーとして活動。社史研究は2011年からスタートし、18年1月から長期視点をビジネスパーソンに広める活動を開始(ウェブサイト「決断社史」)。現在はウェブサイト「The社史」を運営する

■教材
+楠木建・杉浦泰著『逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知』(日経BP)
逆・タイムマシン経営論 第1章 飛び道具トラップ
逆・タイムマシン経営論 第2章 激動期トラップ
逆・タイムマシン経営論 第3章 遠近歪曲トラップ

 ネット通販からフリマアプリによる売買、スキー、ゴルフに至るまで、私たちの生活にとってもはや宅配便は欠かせない。このサービスが始まって今年で45年。世界でも類を見ないきめ細かな物流網を築くきっかけをつくったのがヤマト運輸だ。いまや宅配便で運ばれる荷物は年間40億個を優に上回る。

 近過去に遡り、バズワードなど同時代性の罠(わな)に惑わされないための思考の軸を磨く日経ビジネスLIVEのシリーズ「ケースで学ぶ『逆・タイムマシン経営論』」。第4回はヤマト運輸を取り上げる。まずは、簡単にヤマト運輸の歴史を振り返っておこう。

宅配便サービスは、いまや欠かせない社会インフラの1つとなっている(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 宅配便市場で快走してきたヤマト運輸の躍進の秘密は、利益の確保を二の次に、あくまでも顧客の利便性を追求してきたことにある。この結果、輸送(物流ネットワーク)、情報(VAN)、決済機能(代金回収代行)を持つにいたり、今後の流通革命の主役になる可能性を秘めた企業グループに成長した。

 私たちの日々の生活に欠くことのできない存在となった宅配サービス。その革新のフロントランナーであり続けてきたのが、ヤマト運輸だ。

 同社がその代名詞ともなっている「宅急便」のサービスを開始したのは1976年。それ以前のヤマト運輸は、BtoBを中心とする荷物輸送が中心で、百貨店の三越(現・三越伊勢丹ホールディングス)などの企業が得意先だった。日本の経済、産業社会の発展に伴う運輸需要の多様化を見据え、一般消費者向けの新しい物流サービス「宅急便」を開発し、急成長を遂げた。

 この成長の原動力となったのが、創業者小倉康臣氏の長男で、「宅急便」の展開を主導し、今日のヤマト運輸の礎を築いた小倉昌男氏である。

「宅急便」で今日のヤマト運輸の礎を築いた小倉昌男氏(写真:東洋経済/アフロ)

 今では生活インフラになった「宅急便」だが、日本全国から荷物を集め、配達するには大量の情報の精緻な管理が不可欠であった。ヤマト運輸は「宅急便」の事業開発の過程で物流情報システムを自前で構築している。

 宅配便市場で快走してきたヤマト運輸の躍進の秘密は、利益の確保を二の次に、あくまでも顧客の利便性を追求してきたからだ。この結果、輸送(物流ネットワーク)、情報(VAN)、決済機能(代金回収代行)を持つにいたり、今後の流通革命の主役になる可能性を秘めた企業グループに成長した。

出所:日経ビジネス1987年11月9日号 ケーススタディ ヤマト運輸 「物流革命の旗手、次の手は」

(出所:日経ビジネス1989年8月14日号 特集 「しのびよるSISの脅威 成熟時代を勝ち抜く新経営手法」)。

 注目すべきこととして、情報通信が脚光を浴びるはるか以前、オイルショック直前の1973年にヤマト運輸は子会社「ヤマトシステム開発」を設立し、1980年ごろからコンピューターの本格的な活用に乗り出していることだ。

 SIS(戦略情報システム)ブームが絶頂期を迎えていた頃のヤマト運輸の情報活用は、当時の最先端をいくものだった。宅急便ドライバー向けのポータブル端末を2万台設置し、これらを各営業所に配置された1600台のコンピューター(ワークステーション)に接続することで、荷物の最新情報や売上高の情報を一元的に管理することができた。本社のホストコンピューターがこれらのデータを集計することで、現場の状況をいち早く把握するシステムがフル稼働していた。ヤマト運輸の荷物に関する情報量と処理能力は同業他社を圧倒していた。

 この時点で、競合各社はITの活用に出遅れていた。業界大手の西濃運輸は1984年VAN(付加価値通信網)システムの子会社を設立、1990年には挽回を期すために日本IBMと組んで「SIS」を導入すると発表しましたが、この投資がその後の競争優位に結びついた形跡は見つけられない。

 結局、ネットワークの構築には成功したものの、猫も杓子(しゃくし)もVANに乗り出した中で、VAN機能の利用を促進して物流需要を開拓するというシナリオには至らなかったようである。

 現在、ヤマト運輸は、宅配便業界のリーディングカンパニーであり続けている。ただ、他のライバルと同様、ネット通販の台頭やデジタル化などに、これまでの強みを生かしてどう対応していくのかという課題にも直面している。

 4月27日に開催するウェビナーでは、日経ビジネスに掲載してきた膨大な数のヤマト運輸関連の記事などを生かし、同社がどのように未開の市場を切り開いてきたのか、その経営のブレない軸を深掘りする。一橋ビジネススクールの楠木建教授と社史研究家の杉浦泰氏、そして日経ビジネスの担当記者による議論をお楽しみください。

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