
「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
AIやサブスク……。新しい技術や急成長するビジネスが登場するたびに、世間にはバズワードが流布する。だが、持続的に成長していくには、ブレない経営の軸が必要だ。「同時代性の罠(わな)」に惑わされないための、60分の思考訓練。毎回、注目企業をケースに、一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家・杉浦泰氏が解説する。
第3回のテーマは「セブンイレブン」。コンビニの“王者”として新しい消費スタイルを切り開いてきた同社の経営を、過去に遡ってウェビナーで分析する。今回はウェビナーに先立ち、1996年に日経ビジネスに掲載した、セブンイレブンの実質的な創業者で当時、イトーヨーカ堂の社長でもあった鈴木敏文氏の編集長インタビューを再掲載する。
鈴木氏は、業績が低迷する総合スーパーのイトーヨーカ堂に、セブンイレブンで培った経営ノウハウを持ち込み、改革に挑んでいた。だが、当時のインタビューからは、改革の難しさも垣間見える。
■こんな方におすすめ
+仕事の意思決定において、ブレない思考を養いたい方
+セブンイレブンやコンビニエンスストアの経営に関心のある方
+楠木氏、杉浦氏の著書『逆・タイムマシン経営論』を読んだ方、もしくは興味がある方
+コンビニの商品が好きな方
+企業の歴史、産業の歴史に興味がある方
※参加のご登録いただいた方は、編集部で厳選した日経ビジネスの過去記事をPDFでダウンロードしていただけます
■開催概要
テーマ:ケースで学ぶ「逆・タイムマシン経営論」
セブンイレブンはどうして「コンビニの王者」になれたのか
開催:2021年3月24日(水) 20:00~21:00
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員:無料(事前登録制、先着順)
※有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)
20:00 オープニング ※(講師紹介、講座紹介)
20:05 セブンイレブンの戦略と事業環境の変遷を、過去に遡りながら分析。「逆・タイムマシン経営論」の視点から、楠木氏、杉浦氏が同社の強さを分析する。
20:45 質疑応答
21:00 クロージング
■講師

一橋ビジネススクール教授
1992年、一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、一橋大学商学部専任講師、同助教授、同大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授を経て、2010年から現職

社史研究家兼ウェブプログラマー
1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、現在は社史研究家兼ウェブプログラマーとして活動。社史研究は2011年からスタートし、18年1月から長期視点をビジネスパーソンに広める活動を開始(ウェブサイト「決断社史」)。現在はウェブサイト「The社史」を運営する
■教材
+楠木建・杉浦泰著『逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知』(日経BP)
+逆・タイムマシン経営論 第1章 飛び道具トラップ
+逆・タイムマシン経営論 第2章 激動期トラップ
+逆・タイムマシン経営論 第3章 遠近歪曲トラップ
■特集 イトーヨーカ堂 編集長インタビュー
鈴木敏文氏[イトーヨーカ堂社長]
消費者との競争が始まった
変革はトップダウンしかない
商品力の強化が最大の課題と指摘、チームMD推進に意欲を燃やす。
ディスカウント路線を否定した自らの判断に自信を示す。
今は業態間、業界内の競争ではなく、「消費者との競争の時代」と言う。
中国市場開拓には、授業料を払う覚悟で挑戦。
(聞き手は本紙編集長=当時、永野健二)
*「日経ビジネス」1996年9月30日号より。固有名詞や肩書、数字などは掲載当時のママ。読みやすさや時代背景を考慮し一部表現を改めた部分があります。

総合スーパー(GMS)大手で見ると、イトーヨーカ堂の業績は群を抜いています。しかし、そのヨーカ堂も1993、94年度と2期連続で減益になるなど、必ずしも順調ではない。何が問題なのですか。

鈴木敏文氏(以下、鈴木):マーケットは、過去の売り手市場から、買い手市場に完全に変わっています。しかし、市場の変化に対して、仕事の仕方が変わっていない。ここが一番の問題なんですよ。
世界の小売業と比較した場合に、日本の小売業が遅れているのは、マーチャンダイジング(MD=商品政策・品ぞろえ)だと思います。ここにメスを入れないと、日本の小売業の将来は成り立たないと、僕は考えています。
こうした抜本的な状況の中で、当社は基本的に返品をしていないわけですね。過去2年間連続で減益になりましたが、もし返品をしていたら、減益にはなりませんでした。
あえて減益にしたわけですか。
鈴木:経営者ですから、やはり減益にしたくはないですよ。でも、ある程度授業料を払っても、新しいやり方を軌道に乗せなくてはいけない。そうしないと将来的に世界と競争ができませんから。
鈴木さん自らが先頭に立って、ヨーカ堂では1982年から業務改革委員会(業革)を始めています。厳しい見方をすれば、これまで14年間、業革を進めてきた上で、なおかつ業績は停滞しているわけですね。
鈴木:業革の結果、12~13年前から利益も急激に伸びてきました。しかし利益が出たことで、社員の危機意識が薄れてしまったことも、残念ながら事実です。「鈴木の言っていることは理屈では分かるけれども、今でも売り上げは伸びているし利益も出ているじゃないか」。口には出して言わないけれども、多くの社員がそうした感覚に陥ってしまった。
この数年で言えば、バブルで利益が出たために、社員が危機意識を抱くのがさらに遅れてしまいました。ようやく昨年(1995年)あたりから、これではダメだという意識が社員の腹にはまってきた段階なんですよ。
鈴木さんの考えが、ようやく現場の第一線の血となり肉となってきた。
鈴木:確かに頭では理解し始めたけれども、すぐに結果が出るものではない。今は、そういう段階ではないでしょうか。来年(1997年)か再来年(1998年)になれば結果が実を結び、収益のトレンドも回復に向かうと見ています。
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