<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは:</span><br>「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは:
「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 AIやサブスク……。新しい技術や急成長するビジネスが登場するたびに、世間にはバズワードが流布する。だが、持続的に成長していくには、ブレない経営の軸が必要だ。「同時代性の罠(わな)」に惑わされないための、60分の思考訓練。毎回、注目企業をケースに、一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家・杉浦泰氏が解説する。

 第3回のテーマは「セブンイレブン」。コンビニの“王者”として新しい消費スタイルを切り開いてきた同社の経営を、過去に遡ってウェビナーで分析する。今回はウェビナーに先立ち、1992年に日経ビジネスに掲載した、セブンイレブンの実質的な創業者で、長らく経営を指揮した鈴木敏文氏の人物ストーリーを再掲載する。

 鈴木氏がいかに、原理原則をかざす経営を続けてきたか。そして、それにはどんな背景があったのかを描いている。セブンイレブンとイトーヨーカ堂は1991年、“本家”である米サウスランド社を買収。記事は、鈴木氏がサ社に対して厳しく“経営指導”する場面から始まる。

■こんな方におすすめ
+仕事の意思決定において、ブレない思考を養いたい方
+セブンイレブンやコンビニエンスストアの経営に関心のある方
+楠木氏、杉浦氏の著書『逆・タイムマシン経営論』を読んだ方、もしくは興味がある方
+コンビニの商品が好きな方
+企業の歴史、産業の歴史に興味がある方

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■開催概要
テーマ:ケースで学ぶ「逆・タイムマシン経営論」
    セブンイレブンはどうして「コンビニの王者」になれたのか
開催:2021年3月24日(水) 20:00~21:00
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員:無料(事前登録制、先着順)

※有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

20:00 オープニング ※(講師紹介、講座紹介)
20:05 セブンイレブンの戦略と事業環境の変遷を、過去に遡りながら分析。「逆・タイムマシン経営論」の視点から、楠木氏、杉浦氏が同社の強さを分析する。
20:45 質疑応答
21:00 クロージング

■講師

楠木建(くすのき・けん)
一橋ビジネススクール教授
1992年、一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、一橋大学商学部専任講師、同助教授、同大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授を経て、2010年から現職

杉浦泰(すぎうら・ゆたか)
社史研究家兼ウェブプログラマー
1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、現在は社史研究家兼ウェブプログラマーとして活動。社史研究は2011年からスタートし、18年1月から長期視点をビジネスパーソンに広める活動を開始(ウェブサイト「決断社史」)。現在はウェブサイト「The社史」を運営する

■教材
+楠木建・杉浦泰著『逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知』(日経BP)
逆・タイムマシン経営論 第1章 飛び道具トラップ
逆・タイムマシン経営論 第2章 激動期トラップ
逆・タイムマシン経営論 第3章 遠近歪曲トラップ

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■21世紀への100人
鈴木敏文[セブン―イレブン・ジャパン社長]
原理原則かざし流通革新コンビニ本家を叱り再建へ

原理原則を重視し、それから一歩も引かぬシンの強さが身上。創業経営者の下で自己実現を図る道が、流通業のシステム化。これで経営者としての評価を確立した。そして今、かつて学んだ米国流通業の再生の陣頭に立つ。=文中敬称略(境田敦)

*「日経ビジネス」1992年5月11日号より。固有名詞や肩書、数字などは掲載当時のママ。読みやすさや時代背景を考慮し一部表現を改めた部分があります。

 「そんな作文みたいな報告は聞きたくない。やめてしまえ」。鈴木敏文の大声に、昨年(1991年)3月、米国・ダラスで日米両役員が初めて顔をそろえて開かれた米サウスランド社の役員会は、水を打ったように静まり返った。

 鈴木は英語を解さない。この時も通訳を介して話を聞いていたのだが、米国人役員が業況報告を始めて10分もたたないうちに、突然怒鳴り始めた。その迫力に米国人役員も意味を理解したのだろう。言葉を失い、立ち尽くした。

サ社の経営手法を容赦なく批判、再建指導は手作業の伝票整理から

 イトーヨーカ堂の副社長、そしてグループ会社のセブン―イレブン・ジャパンの社長である鈴木は、月に一度は必ず米国に行く。米国、カナダでセブンイレブンを展開する世界最大のコンビニエンスストアチェーンをヨーカ堂グループが買収、サ社の役員会に副会長として出席するためだ。ここで米国人役員の従来の経営手法への批判を遠慮会釈なく投げつける。

 日本の小売業の海外進出が目ざましい。中でもヨーカ堂のサ社買収は、これまで日本企業が品ぞろえから販売促進の手法まで、すべてを「お手本」としてきた米国有力企業への経営指導であるだけに、業界の関心は高い。創業経営者の伊藤雅俊ヨーカ堂社長の代行として、その陣頭指揮にあたる鈴木にとっても、自ら積み上げてきた経営手法の真価を問われる大事業に違いない。

鈴木敏文氏(撮影=1992年、当時セブン―イレブン・ジャパン社長、写真:東洋経済/アフロ)
鈴木敏文氏(撮影=1992年、当時セブン―イレブン・ジャパン社長、写真:東洋経済/アフロ)

 サ社再建で、国内と同様に強面(こわもて)で臨む鈴木に対して、「なぜ、ミスター鈴木はあんなに短気なのか。もう少しじっくり議論はできないのか」との不満を米国人幹部が抱いていることを鈴木は十分理解している。

 もともと米国側には、“教え子”だったヨーカ堂グループに入るはめになったのは、1987年にカナダ人投資家による敵対的買収に対抗するために、無理な資金調達をした結果であり、コンビニ経営での本質的な失敗ではないとの意識がある。

 これに対し、鈴木は「米国のコンビニは市場環境が変化しているのにもかかわらず、スーパーの補完機能を狙う、という何十年も前からの戦略から一歩も進歩していない」と反論する。

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