記事やウェビナーなど連動する「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」
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 一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家・杉浦泰氏とともに、“近過去”に遡ってブレない意思決定の視座を養うウェビナーシリーズ「ケースで学ぶ『逆・タイムマシン経営論』」。第2回「任天堂 元祖“プラットフォーマー”の奥義」のウェビナーを2月24日(水)午後8時に開催した。

 そこで今回は、ウェビナーでの議論の主な論点を紹介しつつ、任天堂と米アップルの比較などから、読者の皆さんと任天堂の経営の本質を考えてみたい。ウェビナーに参加された方も、そうでない方も、ぜひ、ご意見をお寄せください。

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任天堂の好業績を支える「ニンテンドースイッチ」(写真:ロイター/アフロ)
任天堂の好業績を支える「ニンテンドースイッチ」(写真:ロイター/アフロ)

 2021年3月期に過去最高益を更新する見通しの任天堂。主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」と、ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」などが好調な背景には、「巣ごもり消費の追い風」がある。以前の記事でもそのように書いた。だが、一橋ビジネススクールの楠木建教授は、「任天堂の強さの本質は、“スイッチ”でも“あつ森”でもない」と強調する。どういうことか。

 楠木教授は、「『逆・タイムマシン経営論』の視点で経営の本質を学ぶ上で、任天堂ほどいい事例はない」と話す。逆・タイムマシン経営論とは、過去の事実やメディアにおける言説などを振り返り、検証することで、ノイズに惑わされずに経営の本質を見極める方法論だ。例えば、技術が進化するたびに、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)といったバズワードが広がり、ビジネスパーソンは浮足だつ。だが、過去を振り返ると、当時流布したバズワードが、個々の企業の経営の本質からずれたノイズだったことなどが浮かび上がる。

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 業績の浮き沈みが激しい任天堂の歴史を見ると、同社がいかにノイズに惑わされずに独自の経営を貫いてきたかが分かる。そこに、強さの本質があるという。それを学ぶ上で楠木教授が任天堂のケースで提示する論点は、以下の3つだ。

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 1つ目の論点「『技術の進化』に惑わされず、常に『娯楽屋』であり続けた」は、任天堂が発売してきたゲーム機の歴史が示している。任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売した1983年当時、世の中の潮流は米マイクロとアスキー(当時)が共同で開発したMSX規格の低価格パソコンに流れていた。だが、「娯楽」を重視した任天堂は、ファミコンというゲーム専用機と独自ソフトで勝負し、低価格パソコン勢を圧倒した。

(関連記事:任天堂、“花札屋”が「ファミコン」を生んだイノベーションに学ぶ

 ソニー(ソニー・コンピュータエンタテインメント=SCE、当時)やセガ(セガ・エンタープライゼス=当時)、米マイクロソフトが相次いで参入し、ゲーム機のスペック競争が過熱した際も一線を画し、独自の娯楽を追求し続けた。「ニンテンドーDS」や「Wii」、そして現在ヒットしているニンテンドースイッチはその好例だ。

 唯一、「同時代性の罠(わな)」にはまったのが、ゲーム機の頭脳である半導体チップの処理能力を示す「ビット数競争」が繰り広げられたときだ。任天堂は1996年、32ビット機であるソニーの「プレイステーション」やセガの「セガサターン」を上回る64ビット機「ニンテンドウ64」を発売。だが、ユーザーには思うように受け入れられなかった。

(関連記事:任天堂の中興の祖、山内溥氏が語った「娯楽屋」の発想

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 独自の娯楽を追求することは、実は大きな経営リスクとなる。娯楽は、必ず飽きられるからだ。中興の祖である故・山内溥元社長は1986年の編集長インタビューで、「売れたといっても半年であきられるか、1年であきられるかの差で、やがてはあきられていく。それが娯楽用品の持っている特徴なのですね」と語っている。

 現在の古川俊太郎社長も2021年2月15日号の編集長インタビューで、「どんなヒット商品でも、娯楽のビジネスではいつか必ず飽きが来ます。我々はこれまで何度も、ビジネスが急降下する経験をしてきました。ですから私自身も社内も含めて、この状況が長く続くとは全然思っていません。むしろ毎年正念場だと思っています」と話している。

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