「日経ビジネスLIVE」とは:
「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家・杉浦泰氏とともに、“近過去”に遡ってブレない意思決定の視座を養うウェビナーシリーズ「ケースで学ぶ『逆・タイムマシン経営論』」。第2回「任天堂 元祖“プラットフォーマー”の奥義」を2月24日(水)午後8時に開催するにあたり、日経ビジネスに掲載した一押しの過去記事を再掲載する。

 今回は、1984年12月10日号に掲載した任天堂のケーススタディー(当時のコラム名は「企業戦略」)。家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」発売翌年の記事だが、現在まで続く任天堂の“プラットフォーマー”としての原点と、その背後にある中興の祖・山内溥氏の経営理念が詳しく書かれている。現在の米アップルのアプリ戦略をも彷彿(ほうふつ)させる、その戦略とは。

■こんな方におすすめ
+仕事の意思決定において、ブレない思考を養いたい方
+任天堂の経営に関心のある方
+楠木氏、杉浦氏の著書『逆・タイムマシン経営論』を読んだ方、もしくは興味がある方
+任天堂の商品で遊んでいる方、遊んだことのある方
+企業の歴史、産業の歴史に興味がある方

>>参加を申し込む

■開催概要
テーマ:ケースで学ぶ「逆・タイムマシン経営論」
    任天堂 元祖“プラットフォーマー”の奥義
開催:2021年2月24日(水) 20:00~21:00
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員:無料(事前登録制、先着順)

※有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

20:00 オープニング ※(講師紹介、講座紹介)
20:05 任天堂の戦略と事業環境の変遷を、「ファミリーコンピュータ」の発売時にまで遡りながら分析。「逆・タイムマシン経営論」の視点から、楠木氏、杉浦氏が同社の強さを分析する。
20:45 質疑応答
21:00 クロージング

■講師

楠木建(くすのき・けん)
一橋ビジネススクール教授
1992年、一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、一橋大学商学部専任講師、同助教授、同大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授を経て、2010年から現職

杉浦泰(すぎうら・ゆたか)
社史研究家兼ウェブプログラマー
1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、現在は社史研究家兼ウェブプログラマーとして活動。社史研究は2011年からスタートし、18年1月から長期視点をビジネスパーソンに広める活動を開始(ウェブサイト「決断社史」)。現在はウェブサイト「The社史」を運営する

■教材
+楠木建・杉浦泰著『逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知』(日経BP)

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1984年12月10日号に掲載した任天堂の記事。ケーススタディーとして初めて取り上げた。

■企業戦略 マーケティング

任天堂の「ファミリーコンピュータ」
商戦に圧勝、ゲーム一本やりの“本音商品”

 今、任天堂の「ファミリーコンピュータ」が売れている。昨年(1983年)7月の発売以来、既に165万台を売り、さらにこの年末年始で100万台を出荷する予定という。人気の秘密は、ゲーム本来の面白さを徹底追求した、いわば「本音商品」としての性格付けだ。それが、パソコン機能もゲームも、と二兎(にと)を追った低価格パソコンに飽き足らないゲーム世代の心をとらえた。(酒井義夫)

*「日経ビジネス」1984年12月10日号より。固有名詞や肩書、数字などは掲載当時のママ。読みやすさや時代背景を考慮し一部表現を改めた部分があります。

 昨年の春頃から本格化した家庭用ビデオ・ゲーム商戦。始めは“本場もの” を引っ提げて日本へ進出した米国の最大手アタリが圧勝するのでは、との声が強かった。ところがフタを開けてみると競争に残ったのは日本勢だけ。その中でも京都のトランプの老舗、任天堂が圧勝しそうな勢いなのである。

200万台に迫る販売実績

 その任天堂が昨年7月に発売した「ファミリーコンピュータ」は単行本大の大きさで重さ約600グラム。プラスチック製の本体はコンピューターというよりむしろオモチャに近い外見だ。ところがこの“オモチャ”が、同類のビデオゲームばかりか、低価格パソコンの売れ行きをも左右するほどの勢いで売れている。

 昨年だけで約45万台、今年は10月末までに約120万台を売り、さらにこの年末年始に向けて100万台を出荷する体制を整えているという。家電やコンピューターメーカー14社が出している、低価格が売り物のMSX仕様パソコンが、全社累計販売台数30万~40万台であるのに比べると、売れ行きの突出ぶりがわかる。

 この「ファミリーコンピュータ」、本体はいわばステレオ装置で、レコード盤にあたるゲームのソフトは別売のカセット状のROM(読み出し専用メモリー)カートリッジに収められている。このカートリッジを本体に差し込み、本体をテレビに接続すると、家庭内“即席ゲームセンター”が出来上がる、という仕組みだ。現在売られている「ファミリーコンピュータ」の専用ゲーム・ソフトは20数種類。今までに1000万本以上を売ったという。

「ファミリーコンピュータ」は大ブームとなった。写真は1986年(写真:読売新聞/アフロ)

 なぜこんなに売れるのか。理由はゲーム内容と価格を巧みに組み合わせた点にあるようだ。まず、画像やゲーム展開を処理する集積回路を独自に新しく開発したことが、ゲーム画面の色彩や動きの速さで他社製品に差をつけた。

 「大半のお客さんは売り場で遊んでから買いますからね、少しでもいいものがドッと売れるわけですよ」――。都内百貨店の玩具売り場で聞いた声だ。都内玩具店の店長も、従来のパソコン・ゲームになかったゲームのリアルさが受けている、と言う。たとえばロングセラー・ソフトの「ピンボール」では、ボールの動きに合わせて3つの場面がスピーディーに切り替わる。玩具売り場で遊んでいた中学生によると「スピード感が本物のピンボールより面白い」というのだ。

 また、かつてゲームセンターで流行したゲームと同じ内容のソフトが発売されているのも魅力のようで、「インベーダー世代とおぼしき20~30代の人達が結構買っている」(玩具店店長)という。

 本体価格は1万4800円。子供向けの玩具としてみれば、決して安くない。しかし「ゴルフ」「マージャン」「碁」などの大人用ソフトも用意されていて、家族で楽しめる、という点が売り物。子供連れの父親や20~30代の若者が買っていくというケースが多い。しかもMSXパソコン(3万円以上)やアタリが昨年発売した同様のゲーム機(2万4800円)に比べればだいぶ安い。

 アタリの場合、予定価格を大幅に引き下げて発売したが、日本メーカーが相次いで1万円台で発売したために価格競争に敗れ、ついにこの秋日本から撤退した。もっとも、価格だけがポイントなら、同じ1万円台の機種を出した日本勢の製品がもっと売れていいはずだ。ところが任天堂以外は「それほど売れていない」(玩具店店長)。価格は同じようなものの、「ゲーム内容で差がついている」(百貨店玩具売り場)との声がもっぱらだ。

続きを読む 2/3 低価格パソコン市場を食う

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