「日経ビジネスLIVE」とは:
「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 AIやサブスク……。新しい技術や急成長するビジネスが登場するたびに、世間にはバズワードが流布する。だが、持続的に成長していくには、ブレない経営の軸が必要だ。「同時代性の罠(わな)」に惑わされないための、60分の思考訓練。毎回、注目企業をケースに、一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家・杉浦泰氏が解説する。

 今回取り上げるケースは任天堂。日経ビジネスが掲載してきた膨大な数の任天堂関連の記事などを基に、同社の経営哲学を読み解きながら、近過去に遡って戦略の本質を見極める楠木・杉浦両氏が提唱する「逆・タイムマシン経営論」を学ぶ。

■こんな方におすすめ
+仕事の意思決定において、ブレない思考を養いたい方
+任天堂の経営に関心のある方
+楠木氏、杉浦氏の著書『逆・タイムマシン経営論』を読んだ方、もしくは興味がある方
+任天堂の商品で遊んでいる方、遊んだことのある方
+企業の歴史、産業の歴史に興味がある方

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■開催概要
テーマ:ケースで学ぶ「逆・タイムマシン経営論」
    任天堂 元祖“プラットフォーマー”の奥義
開催:2021年2月24日(水) 20:00~21:00
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員:無料(事前登録制、先着順)

※有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

20:00 オープニング ※(講師紹介、講座紹介)
20:05 任天堂の戦略と事業環境の変遷を、「ファミリーコンピュータ」の発売時にまで遡りながら分析。「逆・タイムマシン経営論」の視点から、楠木氏、杉浦氏が同社の強さを分析する。
20:45 質疑応答
21:00 クロージング

■講師

楠木建(くすのき・けん)
一橋ビジネススクール教授
1992年、一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、一橋大学商学部専任講師、同助教授、同大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授を経て、2010年から現職

杉浦泰(すぎうら・ゆたか)
社史研究家兼ウェブプログラマー
1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、現在は社史研究家兼ウェブプログラマーとして活動。社史研究は2011年からスタートし、18年1月から長期視点をビジネスパーソンに広める活動を開始(ウェブサイト「決断社史」)。現在はウェブサイト「The社史」を運営する

■教材
+楠木建・杉浦泰著『逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知』(日経BP)
+逆・タイムマシン経営論 第1章 飛び道具トラップ
+逆・タイムマシン経営論 第2章 激動期トラップ
+逆・タイムマシン経営論 第3章 遠近歪曲トラップ

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1983年に発売された任天堂の「ファミリーコンピュータ」(写真:読売新聞/アフロ)

 巣ごもり消費の追い風を受けて、任天堂の業績が好調だ。2月1日、2021年3月期の連結営業利益予想を1100億円上方修正して5600億円になると発表。12年ぶりに過去最高益を更新する見通しとなった。

 業績をけん引するのが、主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」。スマートフォンの登場以降、ゲーム専用機ではなくスマホで手軽にゲームを楽しめるようになったことで、任天堂は一時、業績が急速に悪化。2012年3月期からは3期連続の赤字となり業績低迷を余儀なくされたが、2017年3月にスイッチが発売してから、業績は右肩上がりに伸びてきた。

 任天堂はこれまでも幾度となく危機を乗り越えてきた。かつて、花札やトランプを主力とする京都の玩具メーカーだった任天堂が、いかにゲーム専用機という激戦市場で生き延び、新たな遊びを世の中に提供して人々を驚かせてきたか。日経ビジネスの過去記事から歴史を振り返ってみよう。

 日経ビジネスが任天堂を初めてケーススタディー(当時のコラム名は企業戦略)で取り上げたのは、「ファミリーコンピュータ」の発売翌年である1984年。ファミコンという製品の説明が、「家庭用ゲーム機」という市場が立ち上がって間もない製品を読者があまり知らないことを前提にしており、興味深い。

 この「ファミリーコンピュータ」、本体はいわばステレオ装置で、レコード盤にあたるゲームのソフトは別売のカセット状のROM(読み出し専用メモリー)カートリッジに収められている。このカートリッジを本体に差し込み、本体をテレビに接続すると、家庭内“即席ゲームセンター”ができあがる、という仕組みだ。

 そして、爆発的に売れている理由を探るために、当時、家電・電機メーカー各社による3万円程度の低価格パソコン(米マイクロソフトとアスキーが開発した規格「MSX」を採用)と比較している。 “オモチャ”が「低価格パソコンの売れ行きをも左右するほどの勢いで売れている」とファミコンの強さを描いた上で、次のように勝因を分析している。

 低価格パソコンが、あれもできる、これもできるというふれ込みの「タテマエ商品」だとするなら、「ファミリーコンピュータ」は、さしずめ「ホンネ商品」。実際に一番よく使われるゲーム機能だけを追求した“本音の勝負”が明暗を分けた。

「花札屋」からエレクトロニクスの花形へ

 任天堂は、ファミコンを発売して同社をグローバル企業へと躍進させた中興の祖として知られる山内溥氏の曽祖父・山内房治郎氏が、1889年(明治22年)に花札の製造を始めたのがルーツだ。山内社長は「若い頃は、“花札屋のぼん”と呼ばれるのがいやで仕方なかった」と振り返っている。長らく花札とトランプが主な商品で、1959年に発売したディズニーキャラクターを使用したトランプが大ヒット。一時は国内トランプ市場で8割のシェアを握るほどだった。

任天堂の中興の祖・山内溥氏(写真:AP/アフロ、1992年時点)

 だが、ブームが去ると売り上げが激減。倒産の危機に立たされる。それが、ヒットは長続きしないと肝に銘じ、アイデア一発勝負ではない長期間の競争に耐えうる商品の開発に力を入れる経営観の原点にある。

 それは、ファミコンの事業構造にも如実に表れている。ゲームソフトの開発・販売の仕方だ。ファミコンの発売より前、米国では新興のアタリというゲーム専用機メーカーが台頭しブームを巻き起こした。だが、質の悪いソフトも乱造され、ブームは短期間で終わってしまう。このアタリの失敗を反面教師に、「絶対に売れると、確信できるものだけしか出さない」(山内氏)という方針を徹底した。

 そこで取り入れたのが、ファミコン向けのソフトを開発・販売するためには、任天堂とライセンス契約をしなければならないという仕組みだ。ゲーム内容の事前協議や点数制限、製造委託などの項目で、ソフトの管理を徹底した。それが、ファミコンのブームを持続させると同時に、ゲーム機の販売だけではなく、ソフトの販売で高収益を上げる基盤となった。

 だがそれは、ソフト会社から反発も招くことになる。日経ビジネス1989年1月20日号のケーススタディー「企業戦略 任天堂 揺れる“ソフト王国” ファミコンの高収益構造、ヒビ割れの恐れ」では、国内外の一部のソフト会社との軋轢(あつれき)を生んだことが記されている。

 その様子はまるで、アプリの配信を巡って衝突する、現在の米アップルとソフト会社との関係のようだ。アップルがiPhone向けアプリの開発・配信を管理し、“プラットフォーマー”としてのビジネスを確立する30年以上も前に、任天堂はハードとソフトを組み合わせたプラットフォームで勝負するというビジネスを構築したのである。

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続きを読む 2/2 中興の祖・山内溥氏の言葉から任天堂の経営哲学を探る

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