新型コロナウイルス感染症の再拡大が続き、依然として収束の気配が見えない中、消費者は企業に何を求めているのでしょうか。本シリーズでは、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの調査データから、どのような消費者の⾏動変容が浮かび上がるか、読者の皆さんと考えていきます。
11月12日の本シリーズ第1回「[議論]データをどう読む? コロナ感染への不安で揺れる消費欲」において、コロナ禍における国内消費者は、行動や心理の違いによって6つのクラスターに分類されることをお伝えしました。今、感染者数は再び増え始め、流行の第3波が訪れています。EYでは、この間、消費者にどのような変化が表れたのかを突き止めるため、11月に新しい消費者データを集めて再びクラスター分析を試みました。
データを裏付ける皆さんの実体験、または反論などをコメント欄にお気軽にお寄せください。今回も、皆さんと有意義な議論ができることを楽しみにしております。

前回の調査と同様に、11月の調査においても、消費者たちは6つのクラスターに分類されることが分かりました。しかし、個々のクラスターにはいくつかの異変が起こっていることが分かりました。前回調査時に存在したクラスターが消滅して新たなクラスターを形成していたほか、クラスターの性格にも変化が見られたのです。
前回の調査で特徴的だったクラスターとして、CL2「自粛には懐疑的」と、CL4「不安だけど生活優先」という2つの集団がありました。今回の11月の調査では、このCL2とCL4が姿を消し、代わりにCL2+4「消費変わらず感染状況に敏感」が出現しました。
この新しいクラスターに属する人々の特徴は、まるでコロナ流行以前に回帰するかのように、旅行や外食など消費を増やしていることです。交通機関やコンビニの利用も他のクラスターに比べて多く、むしろそれらの利用を去年より活発化させています。
一方で、店舗や施設に対する「感染対策をしっかりしてほしい」という気持ちは強まっており、10月下旬頃から兆候が見え始めた感染再拡大が影響していると考えられます。この新しいクラスターを形成する消費者たちは、表面的には消費行動を回復しているように見えて、心中では世の中の感染拡大状況に敏感な人々であると考えられます。
辛抱強く消費をセーブし続ける「積極的に自粛」層
CL3「積極的に自粛」は、8月に行った調査で全体の18%を占め、一定の存在感を持つクラスターでした。彼らは消費行動を大幅に抑制し、企業の感染症対策にも厳しい視線を持ち、ウイルスに対する強い不安の中で生活してきた人々です。11月に行った調査では、感染再拡大を反映してか、このCL3が26%と割合を伸ばしました。
CL3の人々は、前回調査時と変わらず外出や買い物の自粛に努めており、特に交通機関の利用を減らしています。企業への感染対策の要望も強く、スーパー、百貨店、飲食店など、すべての業態に対して「営業活動よりも感染予防に力を入れてほしい」と考えています。
長期化する自粛要請を堅く守り、強い意志を持って消費抑制を続けるCL3とは、どのような人々なのでしょうか。11月の調査でCL3に該当した人々を性別・年代別にみると、60~70代の女性が3割に上り、クラスター内のマジョリティーとなっていることが分かりました。
シニア女性をターゲットとするビジネスは感染対策にさらなる目配りを
60~70代の女性は、企業の感染対策を厳しく見定める傾向があり、さらに、業態によって求める感染対策も異なることがわかりました。
このグラフは、「どのような対応を受けた時に、今後もうこの企業を利用したくないと思うか」と消費者に尋ねた結果を示したものです。百貨店やコンビニ、飲食店など、すべての業態において最も消費者から嫌われる企業の行動は、スタッフのマスク着用の不徹底であることが分かりました。
60~70代のシニア女性に着目すると、従業員のマスク着用が徹底されていない場合、もう利用したくないと感じる人は4割に上ります。室内の換気や飛沫を抑える仕切りなど、すべての感染対策において、策を講じていない企業を厳しく評価する人が多いようです。また、シニア女性が嫌う企業の対応の第2位は「入り口での来客の消毒が不十分」で、この点でも回答者全体との差異が見られます。スーパーでの感染対策を重要視していることも、シニア女性の特徴と言えるでしょう。
消費者の行動や心理は、感染拡大状況の変化とともに揺れ動いています。また、業態や客層によって、重視すべき感染対策には違いがあると考えられます。企業は、ターゲット顧客のニーズのみならず、離反要因を絶えず把握するよう努め、対策を講じる必要があるでしょう。
読者の皆様は、これらのデータをご覧になり、どのようなことを考えたでしょうか。ご自身の経験などに照らして、気付いた点などがありましたらコメントをお寄せください。
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