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新型コロナウイルス感染症の流行が続く“コロナ禍”において、消費者は今、企業に何を求めているのでしょうか。本シリーズでは、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの調査データから、どのような消費者の行動変容が浮かび上がるか、読者の皆さんと考えていきます。私たちが提示する分析は、あくまでも1つの見方です。ぜひ、データを踏まえて皆さんの気づきや、データを裏付ける実体験、または、反論などをコメント欄にお気軽にお寄せください。有意義な議論ができることを楽しみにしております。

(写真:PIXTA)

 新型コロナウイルスの流行以降、人々は新しい常識や習慣に適応しながら、徐々に日常を再構築しつつあります。しかし感染が再び拡大する傾向が見られるなど、依然として先の読めない状況は続いています。企業は感染拡大の状況や経済動向を注視しつつ、消費者の変化を考慮したビジネスシナリオを策定することが必要です。

 私たちは、今後企業が消費者の支持を獲得するためには、コロナ禍が消費者の行動、心理をどのように変えたのかを解読することが不可欠だと考えました。そこで、7月に日本の消費者7000人を対象に独自の消費行動調査を行い、今後も消費者の生活や心理の変化にフォーカスした定点観測を続けていくことにしました。

 本シリーズでは調査結果を基に、「消費者はどう変わったのか」「彼らが今、何を考えているのか」について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。毎回、最新データを紹介していきますので、お見逃しのないよう、ぜひシリーズをフォローしてください。

消費欲と自粛のはざまで揺れる人々

 パンデミックが続く中で、世界は言い知れぬ大きな不安で覆われています。ようやく人々の手に戻りかけたかに見えた日常生活は、元の形に回帰するのではなく、大きく再構築されようとしています。将来が見通せない状況の中で、生活費を節約しようと考えている人も多いでしょう。

 しかし、人々の心にあるものは感染防止、自粛、節約などだけでしょうか。新時代を生きる消費者たちの思いはもっと多様で、複雑なはずです。リアルな消費者が今、何を考え、何に価値を感じているのかについて、大規模なデータを取り、かつ人々の属性や立場を考慮した分析が必要です。

 そこでまず、消費者の行動や心理に関するデータを基に、クラスター(集団)分析の手法を用いて消費者を分類しました。

約7000人の消費者データをクラスター分析した結果
(出所:EYストラテジー・アンド・コンサルティング)

 分析結果でまず印象的だったのは、日本全体にまん延する感染への不安の大きさが、データとしてはっきりと表れたことです。クラスター(CL)1~4、及び6に属する人々に共通する特徴は「感染に対して漠然とした、ないしは強い不安を感じている」ですが、こうした「感染不安層」とも呼ぶべき人々が消費者全体の88%を占めています。

 元来、日本人は衛生に対する意識が高く、ともすれば「潔癖症的」とも言える気質があることは漠然と認識されてきましたが、ウィズコロナの状況下において、多くの消費者が感染防止を行動原理としているという事実を今あらためて認識する必要があるでしょう。

 本分析では、消費者は6つのクラスターに分かれました。このうち特に興味深いのは、CL4「不安だけど生活優先」の人々です。

CL4「不安だけど生活優先」の消費スタイルと感染対策優先度
(出所:EYストラテジー・アンド・コンサルティング)

 このクラスターに属する人々は、あらゆる店舗・サービスの利用において感染対策を重要視しており、ウイルスに強い恐れを抱いています。しかしその一方で、コロナ流行後も彼らが電車に乗ったり、コンビニエンスストアで買い物をしたりする頻度は、全体平均を大きく上回っていました。そこには感染に強い危機感を抱きながらも、通勤せざるを得ない、忙しい移動中にコンビニでの「ついで買い」をせざるを得ない、という心理と行動の矛盾が見て取れるのです。

 他のクラスターにおいても、生活スタイルの変化や自粛要請に戸惑う複雑な消費者心理がうかがえます。例えば、CL2「自粛には懐疑的」の人々では、全体として企業に対しては感染症対策を「どちらかというと優先してほしい」と答えている人が多いのが特徴です。しかし、よく見るとスーパーやコンビニ、ドラッグストアといった身近な存在に対しては、「どちらかというと営業活動を優先してほしい」と思っている人の割合も少なくありません。

CL2「自粛には懐疑的」の消費スタイルと感染対策優先度
(出所:EYストラテジー・アンド・コンサルティング)

 CL2の人々は、「どちらかといわれればウイルスは避けたいが、とはいえ大げさに消費を控える必要もないのでは」と、世間の自粛ムードに疑問を感じていると考えられます。

 衛生的な環境を好み、ルールやマナーを重んじる日本人的気質と、外出や買い物に興じたいという消費欲の間で揺れながら、人々はそれぞれのニーズを一挙に解決してくれる消費手段を求めています。そのニーズを捉えるための行動が、企業には必要になっています。

 6つに分かれた消費スタイルに柔軟に対応するためには、サプライチェーンの強化やオンライン販売の拡充といったデジタルシフトを急加速する必要があるでしょう。

 読者の皆様は、これらのデータをご覧になり、どのようなことを考えましたか。ご自身の消費行動の変化などに照らして、気付いた点や、さらに詳しく知りたいポイントなどを、コメント欄にお寄せください。

【データから何を読み取りましたか?】

 新シリーズ「[定点観測]“禍中”の消費者をデータで読む」の第1回は、まず消費者の行動様式を6つのクラスターに分類しました。皆さんは、今回のデータからどのようなことを読み取りましたか? 皆さんの「気づき」をコメント欄でシェアしてください。