新型コロナウイルスの拡大が続く中で2021年を迎えました。感染者数の増大、緊急事態宣言の再発令と、慌ただしい年初となりました。状況が目まぐるしく変化していますが、消費者は企業に何を求めているのでしょうか。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングによる定点観測の調査データから、どのような消費者の行動変容が浮かび上がるかを読者の皆さんと考えていくシリーズ。今回は、衣食住の“衣”にフォーカスしていきます。
データはEYの消費者調査結果に加え、匿名化後のクレジットカード購買情報を集計した「JCB消費NOW」の消費指数を使用しています。

アパレルも購入チャネルが激変、EC消費が急拡大
アパレル業界は、コロナ禍で最も打撃を受けたカテゴリの1つともいわれています。国内アパレルを代表する老舗であったレナウンの経営破綻や、総合アパレル大手のワールドによる複数のブランド廃止発表など、2020年はアパレルの苦境を伝えるニュースをよく耳にした1年でした。
こうした状況の中で、消費者の購買行動はどのように変化しているでしょうか。
グラフは、アパレル関連事業の消費者購買指数の推移を、実店舗・ECのチャネル別に表したものです。コロナ流行前には実店舗とECの消費はほぼ同しでしたが、2020年春の感染拡大を機にECが実店舗を大きく上回りました。以降も感染流行の長期化とともに、アパレルにおける消費者の購入チャネルはオンラインにシフトする傾向が見られます。
EYが12月に行った消費者調査でも、「コロナ流行後に衣料品のEC購入に使う金額が増えたか」という設問に対して、3割近い人が「増えた」と答えました。またその理由を聞いたところ、8割が「感染が不安だから」と回答しており、コロナ流行がEC利用のきっかけになった人が多いことが分かります。
皮肉な話ではありますが、コロナ禍は、消費者がECの利便性に気づき、信頼度を高める大きな契機となったと考えられます。買った物を持ち帰る必要がなくまとめ買いをしやすいなどの利便性や、ネットでも安心して服を買える信頼性を実感して、ECへの印象が変わった人は多いのではないでしょうか。
調査ではさらに、アパレルECが消費者の信頼を獲得しつつあることを裏付けるかのような、2つの特徴的な変化が浮かび上がってきました。
1つは、人々がこれまで実店舗でしか買わなかったような高額な商品をECで購入するようになってきたことです。調査では、アパレルのEC消費額が増えた人のうち、およそ3人に1人が、「高品質・高価格帯の商品もネットで買うようになった」と答えています。
もう1つは、コロナ流行下で使わなくなったお金でEC消費をするようになったことです。こちらもおよそ3人に1人が、外食や旅行を控えることで経済的な余裕が生じた分、ECでの衣料品購入が増えたと答えました。