読者とともに日本の政策を考えるシリーズ「みんなで考える日本の政策」。今回のテーマは選択的夫婦別姓。

 国立社会保障・人口問題研究所が2019年に発表した18年の「全国家庭動向調査」では、夫婦は別姓でもよいと考える既婚女性が50.5%に上った。13年の前回調査から9ポイント上昇して初めて半数を超えるなど、選択的夫婦別姓への抵抗感は薄れてきているようだ。

 しかし、自民党は12月、来年度からの第5次男女共同参画基本計画案で、第4次には存在した「選択的夫婦別氏(別姓)」の文言を削除。25日に閣議決定された基本計画では「夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方」に関し、「国民各層の意見や国会に おける議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、更なる検討を進める」との表現にとどまった。

 議論が後退したとの声が上がる中、こうした政府の動きをどう見ているのかを、サイボウズの青野慶久社長に尋ねた。青野氏は、戸籍上は妻の姓を選択しているが、仕事などでは旧姓の「青野」を使用している。2018年に選択的夫婦別姓を認めない戸籍法の規定は違憲だとして、慰謝料などを求めて東京地裁に提訴。選択的夫婦別姓の実現を求めてきた。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

閣議決定された男女共同参画基本計画案では、選択的夫婦別姓の文言が削除されました。現在の選択的夫婦別姓を巡る議論の状況をどのように捉えているでしょうか。

青野慶久・サイボウズ社長(以下、青野氏):この動きだけを見たら後退していると思われるかもしれません。

 ただ、そんなことはなくて、あと一押し、というところまで前進しているように感じています。

1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、97年8月松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長。
1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、97年8月松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長。

 東京地裁に選択的夫婦別姓を求めて提訴したときには、メディアは取り上げても、政治家が僕たちの話を聞いてくれることはあまりありませんでした。それが、変わってきたのが1年後ぐらい。野党の方を中心に国会議員を集めて勉強会を開催できるというところまで徐々に変わってきたのですね。

 2019年の参院選挙では、選択的夫婦別姓が争点になりました。党首討論会で選択的夫婦別姓に賛成なら挙手を求めた場面で、自民党の安倍晋三前首相だけが手を挙げなかったという場面は象徴的な場面でした。

 その安倍前首相が辞任したことによって議論がまた進展していますよね。菅義偉首相は就任後、選択的夫婦別姓に対して過去に賛成の意思を表明してきたことから、「責任を感じる」と答弁していました。自民党内でも議論ができるようになった印象です。

ただ、今回は文言が削除されてしまいました。選択的夫婦別姓に反対をしている政治家は、「一体感のある家庭」が崩れるといったことを主張しています。

青野氏:反対派が声高に意見を表明する中、賛成派は押し切るほど自信がなかったのかもしれません。

 ただ、またメディアで取り上げられることで、賛成の意見が多いことも分かる。自信がつくのではないでしょうか。

 また、「一体感のある家庭」という主張は、夫婦同姓だから離婚をしないかというとそんなことはありません。反対する人の論拠が顕在化するようになりましたが、こうした論拠を見ていると、あまり説得力がないと感じる人が多いのではないでしょうか。

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