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 新型コロナウイルスの流行に伴い、時限的に全面解禁されたオンライン診療。菅義偉・新政権は改革の目玉の1つとして、オンライン診療に関する時限的な特例措置の恒久化を掲げている。

 ただ、対象とする疾病やオンライン診療を実施してよい間隔など、ルール作りを置き去りにした、「前のめり」の改革を懸念する声も上がる。

 シリーズ「みんなで考える日本の政策」では前回の記事「[議論]インフルエンザも? オンライン診療はどこまで可能か」に続きオンライン診療を取り上げる。オンライン診療を普及させるのに必要なプロセスとは何か、日本医師会の今村聡副会長に話を聞いた。今村副会長は、オンライン診療が規制改革の象徴としてシンボリックに取り上げられている現状に違和感を表明する。どういうことか。

オンライン診療の特徴とは何でしょうか。

今村聡・日本医師会副会長(以下、今村氏):イノベーションにより、医師が遠隔地から患者の情報を把握できるようになりました。画面を通して見ること、話を聞くこともできる。

 ただ、医師の養成課程で、最初に習うのは問診、聴診、触診です。「手当て」というぐらいだから、患者さんに直接触れる行為は長年、医療の基本でした。オンライン診療は、全ての医療行為をカバーすることができるわけではなく、限界があることは間違いありません。オンライン診療で得られる情報と、通常の対面診療で得られる情報では格差が明らかにあるということです。

 新型コロナウイルスは未知のウイルスで、特に初期は医療側、患者側の双方に対面医療への不安がありました。このため4月、特例として時限的にオンライン診療のルールは緩められたという経緯です。

今村聡(いまむら・さとし)氏
1977年、秋田大学医学部を卒業。三井記念病院、神奈川県立こども医療センター、浜松医科大講師、静岡県立総合病院医長などを経て、91年から東京都板橋区の今村医院院長。日本医師会では2006年に常任理事、12年から副会長。

コロナ以前のオンライン診療の状況は、どうだったのでしょうか。

今村氏:1997年、厚生省(現・厚生労働省)健康政策局長の通知で、医師と患者の距離が離れた医療は「遠隔医療」として認められました。今回、「恒久化」という言葉が出ていますが、医療として既に認められています。

 ただ、日本においては保険診療に認められるかどうかが大きい要素です。厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が、保険診療の診療報酬や対象範囲について議論してきました。保険診療の対象になるには、安全性、有効性、費用対効果が一定程度あるものでなければならず、遠隔医療は2018年に初めて保険診療として認められました。

 今回は規制改革という文脈で、オンライン診療をどうするかという話になっていますが、医療当事者からすると保険診療のルールを規制と言われると、今までの保険診療の全てが規制となりかねないな、と違和感があります。

どういうことでしょうか?