欧米とアジアの子育て観は別
「お金がかかる」という課題に対しては、仕事と子育ての両立支援策によって夫婦で稼ぎやすくなります。両立支援策は役立ってきたとは言えないのでしょうか。
山田氏:もちろん女性が働きやすい環境をつくるということは、少子化対策として役立ってはいます。
しかし、忘れてはならないのは、「女性が活躍しさえすれば、少子化が解決する」というわけではないことです。日本の働く女性は男性以上に非正規が多いので、「稼ぐ」といっても限度もあります。
複数ある条件のうち、両立支援だけに力を入れていても意味がないということです。
シンガポールや香港、台湾では女性は学歴も収入も高い。それでも少子化は日本以上に進んでいます。一方で、スウェーデンやオランダ、アメリカのように女性が活躍し、少子化が起きていない国もあります。
欧米を見れば、確かに女性の活躍と少子化は両立しているかもしれません。しかし、アジアを見れば、そうでないことが分かります。
アジアでは「子供に掛かる費用を親が出さなければいけない」「子供のために良い環境を整えなければならない」という考えが少子化に影響しているといわれています。日本も欧米でなく、そちらに近いのです。
例えば国立社会保障・人口問題研究所の『出生動向基本調査』からも分かりますが、30~34歳の女性で希望の子供数を持たない理由で最も多いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(81.1%)です。政府が力を入れてきた両立支援の「自分の仕事に差し支えるから」(24.2%)よりずっと多いのです。
「子供に費用をたくさんかけないといけない」と思っている状況下では、いくら男女共同参画が進んだとしても、それだけで少子化は解消されないのです。
一定人数の子供を持つ家庭は大学を無償化したり、奨学金の返済をしている人は子供の教育費を一部免除したり、といった政策を採れば、少子化対策としてある程度は有効だと考えられます。
さらに言えば、両立支援の規模も十分でなかったと言えます。日本人はリスクを嫌います。待機児童の問題については対策をしているとはいえ、特に大都市部では解消されていませんよね。「出産して本当に子供を保育園に入れられるのか」という不安はなくなりません。そうした不安が全くなくならない限り、対策は十分でないのです。
菅義偉政権は、不妊治療の保険適用や新婚生活への補助拡大といった施策を打ち出しています。これまでの先生の指摘を踏まえると、あまりインパクトはないということでしょうか。
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