新型コロナウイルス感染症の急激な広がりを受け、政府は緊急事態宣言を今週中にも再び発令する検討に入った。対象は特に感染者数が多い東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏1都3県とする方向だ。都は飲食店全般の営業を午後8時までとする時短営業を要請する方向で、他の3県も足並みをそろえる見通し。重症者向け病床使用率は首都圏以外でも上昇しており、政府や自治体が均衡を保ってきた「感染防止と経済再生の両立」が難しい状況になってきた。

緊急事態宣言を再度発令する検討に入ることを表明した菅義偉首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
緊急事態宣言を再度発令する検討に入ることを表明した菅義偉首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 「飲食でのリスクを抑えることが重要で、夜の会合を控え、飲食店の(営業)時間短縮にご協力いただくことが最も有効だ。国として、緊急事態宣言の検討に入る」。菅義偉首相は4日午前の年頭記者会見でこう強調した。

 昨年12月29日から1月3日までの年末年始には、1日平均約3500人の新規感染者が確認された。重症者は4日時点で731人と昨年5月の「第1波」の2倍強の水準。帰省や旅行など地域をまたぐ移動には待ったがかかったが、首都圏では年始の人出は思うように減らず、1都3県の知事が国に緊急事態宣言の発出を求めた。

 国が新型コロナ対策の特別措置法に基づいて緊急事態宣言を出すと何が変わるのか。我々は昨年4〜5月に緊急事態宣言を経験済みだが、改めてその内容を確認しておこう。

 まず、対象となる期間や区域を決めるのは政府だ。そして対象地域の都道府県の知事は、明確な法的根拠をもって、地域の住民らに様々な要請ができる。不要不急の外出自粛を要請できるほか、飲食店や劇場、映画館などへの休業要請、学校や福祉施設などの使用制限などが可能になる。臨時の医療施設の開設などについての権限も持つ。

 要請に対し店舗や施設が正当な理由なく応じない場合は、知事はさらに強い「指示」をすることもできる。基本的に罰則などの強制力はないが、前回の緊急事態宣言発令下には、要請に応じない事業者名を公表する、といった措置も取られた。世間による「相互監視」が強まることなどから、地域の経済活動には強いブレーキがかかる。

 そういった状況のため、1月11日までを期限として全国一斉で停止している観光支援事業「Go Toトラベル」を予定通り再開する空気はまるでない。菅首相は「当面は新型コロナの感染対策を最優先に取り組む」とも言及。大阪府で重症者の病床使用率が7割を超えるなど首都圏以外の広がりも深刻で昨年のように緊急事態宣言の範囲が広がる可能性もある。

 昨年3月以降、我々は新型コロナと向き合い、それに対応する政府や自治体の動きを見てきた。昨年は5月25日に全国で緊急事態宣言が解かれ、収縮した経済を下支えする対策が相次いだ。代表格が7月下旬から始まった「Go To」事業。ただ10月下旬からの「第3波」はかつてなく大きく、昨年末には日本でも感染力が強いとされる「変異種」が見つかった。

 もちろん「2月下旬までに接種を開始できるように政府一体となって準備を進めている」(菅首相)というコロナワクチンは一筋の光明だ。しかし、ある専門家は「ワクチンだけではなく治療薬も必要」と指摘する。コロナの変異は今後も予想され、どこまでワクチンが切り札となるかはまだ分からない。

 そんな不透明さが充満する今だからこそ、どのようにして感染爆発を防ぎ、一方で、経済を守っていくかといった議論は重要だ。政府や自治体はどのような政策を打ち、地域社会はどのような機能を維持していくべきか。何も分からず、すがるような目で政府や自治体の動きを見ていた前回とは、状況は異なっている。

【ご意見募集! 緊急事態宣言の再発令、今すべきことは?】

 週内にも1都3県で緊急事態宣言が再度、発令される見通しとなりました。緊急事態宣言が発令されたら、皆さんは今、何をすべきだと思いますか。感染拡大を抑えるために、政府、企業、個人はそれぞれの立場でどのような行動を起こすべきか、皆さんのご意見をお寄せください。

※コメントの投稿は有料会員限定です

【お知らせ 西村康稔経済財政・再生相がライブ出演】

 1月19日(火)12:15から、西村康稔経済財政・再生相がウェビナーにライブ出演します(編集部より:当初、1月15日に予定していましたが、1月19日に変更になりました)。緊急事態宣言の再発令など政府の新型コロナウイルス感染防止策を中心に、経済政策などについても編集委員の安藤毅の質問に答えます。

 お見逃しのないよう、シリーズ「みんなで考える日本の政策」を「WATCH」してください。

■ウェビナー:西村康稔経済財政・再生相に聞く
       感染拡大、どう止める? 今すべき対策と行動とは

■日時:1月19日(火)12:15~(30~40分間)
■配信場所:日経ビジネス電子版「みんなで考える日本の政策」
※配信ページはこちら。西村大臣の都合で配信日時が変更となる可能性もあります

■変更履歴
ウェビナーの日時が1月15日(金)から変更となり、1月19日(火)12:15~となりました。【お知らせ】は変更済みです。[2021/1/10 18:00]
■変更履歴
記事最後の【お知らせ】でウェビナー開催の日付を12月15日としていましたが、正しくは1月15日です。おわびして訂正します。[2021/1/7 6:30]

この記事は会員登録でコメントをご覧いただけます

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「みんなで考える日本の政策」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。