本シリーズでは、行動健康科学に基づく組織開発とストレスマネジメントの専門家である川西由美子氏(ランスタッドEAP総研所長)を講師に招き、働き方や上司と部下の関係、チームマネジメントなどについて、読者の皆さんが抱えている悩みに答えていきます。


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年末年始に、コロナ禍で感じたモヤモヤ感の棚卸しをしよう(写真:PIXTA)

 こんにちは、川西由美子です。

 いよいよ年の瀬が迫ってきましたね。新型コロナウイルスの感染拡大で動きにくい中、普段は忙しくても、「年末年始は巣ごもり休暇」という方も多いのではないでしょうか。「空き時間ができる」という非日常な環境は、本来の自分を取り戻すチャンスかもしれません。

 2020年の変化はあまりに大きく劇的でした。気軽に出かけて人と会うことが難しくなり、在宅勤務やオンライン会議が浸透しました。移動しなくていいことが便利なのは確かですが、オンラインでは、リアルの環境のように空気感をつかむことはできません。そのため、情報の処理が追いつかず、否が応でも、脳に疲労がたまる状況が広がっていました。

 今年最後のこのコーナーは、皆さんの悩みにお答えするスタイルから変更し、私がお題を設定することにします。テーマはこれです。

■お題
20年の出来事を整理し、オキシトシンを高めて2021年に臨む

 コロナストレスによる脳の疲労を楽にし、幸福感を高めやすくする心理療法のアプローチをお教えしたいと思います。

川西由美子(かわにし・ゆみこ)
1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年に設立したEAP総研の代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後、フィンランドで、世界25カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得。現在はランスタッド傘下となったEAP総研の所長を務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。

 オンラインが主体となった20年、情報は意外にも、従来並みか、それ以上に入ることになりました。オンライン環境では人を集めるのが容易なため、一般的に、主催側は普段よりも幅広く声をかけます。自分にはあまり関係ないと思えるような会議や資料であっても、真面目な人ほど、対応しようとしてしまうのが実情でしょう。

 社会の変化とオンライン化で昼間のインプット量が増え、情報過多の状況に陥ってしまうと、その日に起こったことを「適切に処理」するのは難しくなります。すると、睡眠中にも脳は、非常に多くのエネルギーを使いながら、その情報が必要か必要でないかの仕分けを続けてしまいます。

 これにより、眠りが浅くなるなど、睡眠の質が悪くなります。質の悪い睡眠は疲れを残すだけでなく、その後の考えに偏りを生み、自分の判断に自信が持てない状態を招きます。

 こういった状況では、人間関係も悪化しがちです。本来、コミュニケーションとは会話のキャッチボール。相手が受けやすい球をお互いが意識して投げ続けることで、徐々にリズムが合うようになり、良い空気感が醸成されるのです。

 しかし、疲労がたまり判断に自信が持てなければ、相手が取れないような強い球を投げてしまうなど、つい自分を守ることを優先する行動を起こしやすくなります。逆に、意に沿わない相手の意見に従い、もんもんとした気持ちのままで過ごすことも増えてしまいます。

 こういった行動が始まると、物事に対する認知がゆがみ、今までは難しくなかった前向きな行動ができなくなるという負のサイクルにはまります。そして、この繰り返しは、未来に不安を抱いて落ち込んでしまうという、非常に困難な状況を招きかねません。

 悪循環を断ち切ることを助ける、心理カウンセリングの技法があります。「認知行動療法」というもので、心を落ち着かせる効果が睡眠薬並みにあるとして、米国の全州で保険診療の対象になっています。

 この療法の創始者の1人である臨床心理学者のアルバート・エリス氏は「人は出来事そのものではなく、出来事をどう受け止めるかによって、情動的に混乱する」と指摘しています。

 では、情報の整理の仕方をご説明しますね。

続きを読む 2/2 「ABC」を紙に書き出しもやもやを解消

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