本シリーズでは、行動健康科学に基づく組織開発とストレスマネジメントの専門家である川西由美子氏を講師に招き、働き方や上司と部下の関係、チームマネジメントなどについて、読者の皆さんが抱えている悩みに答えたり、分析したりします。 今回は、優秀な社員を辞めさせない組織づくりの方法について考えます。


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 だんだんと寒さが厳しくなる季節になりましたね。気温が下がると、自然と体に力が入ってしまいますので、入浴などで筋肉のこわばりをほぐしてくださいね。筋肉が緩むと、心に余裕が生まれ、心身共に良い効果が出ます。

 前回は、「優秀な社員を辞めさせない、忘れてはいけない2つの対策」について書きました。多くの方に見ていただいたため、皆さんの関心が高いことが伝わりました。ありがとうございました。

解決志向型組織とは

 今回は、優秀な社員を辞めさせないための効果的なコミュニケーション手法である「解決志向型組織のつくり方」について考えたいと思います。

<span class="fontBold">川西由美子(かわにし・ゆみこ)氏</span><br />1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年からはEAP総研代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後フィンランドで、世界25カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得した。現在はオランダが本社の総合人材サービス会社ランスタッド(日本法人)と合併後、クライアントソリューション組織開発ディレクターを務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連出版社)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。
川西由美子(かわにし・ゆみこ)氏
1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年からはEAP総研代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後フィンランドで、世界25カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得した。現在はオランダが本社の総合人材サービス会社ランスタッド(日本法人)と合併後、クライアントソリューション組織開発ディレクターを務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連出版社)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。

 解決志向は、1980年代に心理士のインスー・キム・バーグ氏らによって開発され、短期的に効果を出す「ブリーフセラピー」として体系化されました。臨床心理学の分野で医療目的に使われました。その効果から組織心理学の中でも用いられ、社員が未来を向いて働きやすい職場に変えるための方法論として、ヨーロッパで広まりました。

 ベトナム戦争を経験した兵士の心のケアなどに応用され、その効果が高かったことから、世界的に注目が集まりました。近年は欧州などを中心に組織変革の手法として用いられています。ドイツでのベルリンの壁崩壊からの欧州経済混乱期に、各国で人々の気持ちを前向きにするためにも利用されました。

 また、旧ソ連崩壊による経済悪化のあおりを受けた後、経済復興を遂げたフィンランドでもこの手法が使われました。その効果を目の当たりにした私は、フィンランドの政府や企業を改善させた精神科医と社会心理学者がつくった学校の門戸をたたき、解決志向を学びました。解決志向を一言で言えば、「未来志向型のポジティブ心理学」です。

 組織において、「なぜなのか」と理由を追求しても解決に至らないような、人の心が関与する複雑な問題に直面した際には、社員の視点を未来に向かわせることが効果的です。実は、優秀な社員を辞めさせないために、解決志向型の組織は海外でも推奨されているのです。

 私は2019年末、ドイツ語圏で、世界的に名の知れている大手メーカーやサービス業の組織開発コンサルタントとして活躍しているウイルヘルム・ガイスバウワー氏と、優秀な社員を辞めさせない組織について意見を交わしました。そのとき、解決志向型に組織を変革することによって、そうした課題に対応できるとの思いを共有しました。

 ガイスバウワー氏は、著書『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』の中で、権威によって押さえつける支配的な経営層に代わり、組織やチームメンバーの心理的側面を考慮して共感や協働の意識を高めるニューオーソリティー(新しい権威)が必要であり、「そのための手法の一つとして解決志向型組織づくりがある」と記しています。

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