本シリーズでは、行動健康科学に基づく組織開発とストレスマネジメントの専門家である川西由美子氏(ランスタッドEAP総研所長)を講師に招き、働き方や上司と部下の関係、チームマネジメントなどについて、読者の皆さんが抱えている悩みに答えていきます。


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(写真:PIXTA)
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 こんにちは。ランスタッドEAP総研の川西由美子です

 先日、私のコメントが掲載された日本経済新聞の記事に対し、あるシニアの方から連絡がありました。「新型コロナウイルスの『巣ごもり』環境において、新たな趣味に挑む意欲を持つ高齢者が少ないが、どうすべきか」というのが記事の趣旨でした。このお悩み、興味深かったので、少し深掘りしてご紹介いたします。

悩み:歳をとって、主体的に動くのがどうにもおっくうになってしまいました。引退した連中は誘っても出てきませんし、来るのは訃報ばかりですからね(笑)。

 若い人の間では、徐々に新型コロナとの「共存」が進んでいるように見受けます。ただ、重症化する可能性が高い高齢者にとっては、対応は簡単ではありません。そんな中で、持て余しがちな時間をいかに有効に使うか、というのは非常に重要な視点です。

 普段何気なく過ごしていても、人生には出会いや想定外の出来事があり、それらは知らず知らずのうちに前に踏み出すモチベーションとなっています。歳を重ねて新たなチャレンジをする方が輝いて見えるのは、内側から意欲がにじみ出るからでしょう。

<span class="fontBold">川西由美子(かわにし・ゆみこ)</span><br> 1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年に設立したEAP総研の代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後、フィンランドで、世界25カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得。現在はランスタッド傘下となったEAP総研の所長を務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。
川西由美子(かわにし・ゆみこ)
1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年に設立したEAP総研の代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後、フィンランドで、世界25カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得。現在はランスタッド傘下となったEAP総研の所長を務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。

 行動の範囲を限定せざるを得ない期間が長引くのは、好ましいことではありません。もちろん、自分は家の中で何もしなくて大丈夫、という方もいらっしゃると思いますが、ストレスなどにより、考え方の視野も極端に狭くなる「心理的視野狭窄(きょうさく)」の状態が身近なものになってきます。

 ご連絡いただいたシニアの方は愛嬌(あいきょう)をお持ちのすてきな方なのでしょうね。「訃報ばかり」とあるのには、正直、どう反応していいか、戸惑ってしまいましたが。

 新たな趣味に挑む高齢者が少ないことに対する私のコメントは、「過去に会った人を丁寧に思い返し、思い切って連絡してみてはどうか」という提案でした。見えない世界に踏み出すのはいつも怖いもので、それは歳を重ねて保守的になればなおさらです。それならば、まずは知っているはずの世界をのぞいてみればいい。主体的な動きではありますが、知らない世界よりずっと気軽なはずです。