離職者増で組織改革が空回りに
人手不足を埋めるための頼みの綱は中途採用者です。その組織になじんで能力を大いに発揮する人もいますが、人によっては前職の癖が抜けない、スキルと実績がフィットしない、社風になじめないなどの理由ですぐに離職してしまう現実もあります。
離職者が増えると、40~60歳のミドルシニア層に対する変革に向けた過度な期待とプレッシャーの高まりなどから、組織改革が空回りするなど、組織にいい影響を与えません。
では、どうしたらいいでしょうか。組織の環境改善のスピードを上げるためには、社員が70歳まで生き生きと活躍できるような道しるべを企業が示すことです。2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務となりました。
社員を輝かせて組織を活性化させる施策の中核に、「30~45歳の離職者を減らす」ことを目標に据えていただきたいです。
ブランド作りの過程に問題
将来の活躍が期待できる20歳代の若手は、世代の近い30歳代が心の支えであり、会社や社会を見る「心の窓」であることを経営者は忘れてはいけません。30歳代がいち早く離職を決めてしまい、会社に長く貢献できない文化を作っていると、若手の離職者数は増える一方です。
そうした中、最近、忖度(そんたく)する日本独自の文化による弊害、企業のブランドコンセプトの作り込み過程の問題が離職率の増加に影響を及ぼしているのではないかと感じています。その根拠となる2つの例をお話しします。
以下は、離職願望がある方が最近よく口にする文章です。
1.皆で力を合わせたプロジェクトが途中までうまくいっていたものの、上司が入り、彼の独自な考えで変な方向になった。また、うまくいっても手柄を上司が取って、チームは社から評価されない。
2.今、会社がうまく回っていても5年10年後、私たちは何を大切にしてどこを向いてどのような仕事をしているのか未来が見えない。今の会社の存在意義が分からない。
この2つの例から言える企業側の抱える問題点を解説します。