本シリーズでは、行動健康科学に基づく組織開発とストレスマネジメントの専門家である川西由美子氏を講師に招き、働き方や上司と部下の関係、チームマネジメントなどについて、読者の皆さんが抱えている悩みに答えたり、分析したりします。 今回は、ウェルビーイング効果を最大に引き出す工夫について考えます。
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こんにちは、川西由美子です。

1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年からはEAP総研代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後フィンランドで、世界25カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得した。現在はオランダが本社の総合人材サービス会社ランスタッド(日本法人)と合併後、クライアントソリューション組織開発ディレクターを務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連出版社)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。
ススキの穂が店舗で販売されている様子を見ると、お月見の時期、秋が来たなと感じます。皆様がお住まいの地域では、どのような秋の景色が見えるでしょうか。
新型コロナ禍で、最近感じるのは、多くの人々が自然の移ろいに目を向ける時間が長くなり、コロナ前よりもそうした変化を仲間と共有しようと考える人が増えていることです。
自分が感じた美しかったもの、新たに気づいたことなどを周りに伝えようとする行為は、心理学的にいうと、コミュニケーションする相手を大切に思う気持ちや、その人と良い関係を持ちながら、心地よく過ごしたいと思う状態(これをウェルビーイングといいます)がベースにあるとされています。

幸福を高めるのは質と深さ
ウェルビーイングを望むのは、ストレスを多く感じやすい現代では自然なことです。日ごろ感じている、慢性的なストレスから自身を快適な状態に戻そうとする自然治癒のプロセスである、心の「恒常性」が働くのです。
私がふと思い出した研究があります。
米ハーバード大学が行った、「ハーバード成人発達研究」という1939年から75年にも及ぶ心と体の健康を追跡した調査です。この研究のディレクターを務めていた心理学者ロバート・ウォールディンガー教授によると、幸福感と健康を高める要素は「身近にいる人との人間関係の質と深さだ」と結論付けています。
頼れる人が1人でも周りにいると、「神経系の緊張が解放され、心と体の苦悩が改善される」ということが研究データから、明らかになりました。
例えば、コロナ禍で周囲とのつながりを意識するようになり、日ごろ接している会社の人と普段は意識していなかった人間的な深い触れ合いをしたことで、その人に質問や意見を言いやすくなり、仕事しやすくなった――。そう感じているならば、人間関係の質が向上し、その人とのコミュニケーションが深まったことを意味しています。結果、仕事がしやすくなっているということは、精神的につらく苦しいことから解放されている状態なので、幸福感と健康を向上させる良いサイクルが回っているのです。
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