本シリーズでは、行動健康科学に基づく組織開発とストレスマネジメントの専門家である川西由美子氏を講師に招き、働き方や上司と部下の関係、チームマネジメントなどについて、読者の皆さんが抱えている悩みに答えたり、分析したりします。 今回は、自主的に社員が動けるようにするインナーブランディングについて考えます。


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 暦の上ではもう春ですね。

 先日、マスクをしていても梅の花の甘い香りを感じました。マスクをしていなくても歩けていたときの、春の風がほほをなでる記憶がよみがえりました。記憶や経験は連動していて、もっと春を感じて自然に触れたくなりました。

 感情、記憶、過去の経験が判断基準となり、現在の決断に影響を与えるメカニズムが人間にはあります。前回紹介しました、温泉地でのワーケーションの事例について読者の方から「温泉の気持ち良さを思い出しました。温泉地で仕事ができたらどれだけいいか、ましてや、リラックスした状態で仕事の同僚と未来や問題点を話し合えたら、自由な発想がたくさん出るでしょうね」といった感想を頂きました。

 楽しく働くことを許せる文化を、会社側が提供することのメリットについて考えた方も多かったのではないでしょうか。

<span class="fontBold">川西由美子(かわにし・ゆみこ)氏</span><br />1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年からはEAP総研代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後フィンランドで、世界27カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得した。現在はオランダが本社の総合人材サービス会社ランスタッド(日本法人)と合併後、クライアントソリューション組織開発ディレクターを務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連出版社)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。
川西由美子(かわにし・ゆみこ)氏
1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年からはEAP総研代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後フィンランドで、世界27カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得した。現在はオランダが本社の総合人材サービス会社ランスタッド(日本法人)と合併後、クライアントソリューション組織開発ディレクターを務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連出版社)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。

 今回は、楽しくて働きがいがあり、目的への行動化を促進できるキーワードでもある「インナーブランディング」について話します。

 インナーブランディングとは「将来、会社がどうありたいか」「何を大切にしているか」について社員が理解できるようにする社内向けのブランディング戦略です。「インナー」は社内という意味です。

 インナーブランディングの方向性が、社員が目指したいこととマッチしていて、社員の感情を動かすことができれば、社員の帰属意識や仕事のやりがいが向上し、自主的に目的に向かって動く人が増えます。結果、仕事の面白さが増大し、新規顧客の獲得、社内改善活動の促進につながり、定着率も高まります。

 では、インナーブランディングをどのように社員に浸透させればいいでしょうか。

 まず皆で感情面が変化するような楽しい記憶をつくって、会話を進展させたり、プロジェクトの一歩を踏み出したりする経験をさせましょう。楽しい記憶と感情、好ましい経験が「皆が集まり、知恵を出せば楽しいことが体感できる会社だ」と前向きに考えられるようになり、自主的な行動をする判断基準となります。

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