本シリーズでは、行動健康科学に基づく組織開発とストレスマネジメントの専門家である川西由美子氏(ランスタッドEAP総研所長)を講師に招き、働き方や上司と部下の関係、チームマネジメントなどについて、読者の皆さんが抱えている悩みに答えていきます。
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こんにちは、川西由美子です。
新型コロナウイルスの影響で帰郷できず、自宅にこもりがちなお正月を過ごした人も多いのではないでしょうか。
私のところに届いた新年のご挨拶の中に「コロナによる仕事へのダメージは今後も未知数。だからこそクリアな思考を身に付けて判断力を鈍らせないようにしなければ」という文章がありました。嘆くだけでなく、内省し、前を向こうとする姿勢は素晴らしいですね。
今回はこの「クリアな思考」について、少し掘り下げたいと思います。
悩み:コロナによる仕事へのダメージは今後も未知数。だからこそクリアな思考を身に付けて判断力を鈍らせないようにしなければと思うのですが、どうしたらいいでしょうか。
クリアな思考に必要なのは、なにはともあれまず睡眠です。
自治医科大学の研究によると、睡眠時間が6時間未満の人は7〜8時間の人に比べて死亡する危険度が2倍強に高まるそうです。想定される死因はうつやガン、認知症、心疾患などです。米ペンシルベニア大学と米ワシントン州立大学の実験では、6時間睡眠を2週間続けると、脳の活性度が連続2日間睡眠を取らなかったときと同程度まで低下することが分かっています。

1998年に行動健康科学をベースにしたコンサルティング会社を創立。2005年に設立したEAP総研の代表取締役として多くの企業でメンタルヘルス対策などにあたり、その後、フィンランドで、世界25カ国で使われている組織活性化技法「リチーミング」の指導者資格を取得。現在はランスタッド傘下となったEAP総研の所長を務める。臨床心理学や産業組織心理学が専門で、著書に『ココロを癒せば会社は伸びる』(ダイヤモンド社)、訳書に『産業組織心理学によるこれからのリーダーシップ』(日科技連)など。ベトナムやインドネシアの企業・大学でも研修・教育活動を行っている。
政府の国民健康・栄養調査(2019年)によると、30〜50代の男性、40〜50代の女性の5割前後の平均睡眠時間が6時間未満でした。日本人の睡眠時間の短さは経済協力開発機構(OECD)の国際比較でも指摘されていますが、「6時間」は十分ではありません。
「睡眠負債」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。睡眠不足は負債のように体に蓄積されるので、このようにいわれます。
睡眠のメカニズムを知っておくことも重要です
睡眠の質において大切なのは、ストーンと深い眠りに入ることです。これは「ノンレム睡眠」といって、脳と体が同時に寝ている状態です。その後、脳が休まると、むくむくと脳だけが起きて、この記憶は必要、この記憶はいらない、と脳内を整理します。これが「レム睡眠」です。
そしてまた脳が疲れて、脳と体が寝る。このサイクルを4~5回繰り返すと、脳がクリアになって体の疲れも取れる「良い睡眠」が得られます。
しかし、睡眠の導入時に深い睡眠に入れない「入眠困難」という状態が起きると、脳と体をしっかりと休めることができません。また、睡眠中、途中で目が覚める「中途覚醒」や、朝早く目が覚めて眠れなくなる「早期覚醒」に陥ると、エネルギーを蓄えたり、脳が整理したりする時間が少なくなり、クリアな思考は作り出しにくくなります。
では、それぞれの対処方法を説明しますね。
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