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自分が望むキャリアを主体的に築いていくにはどうしたらいいのかを、「マーケティング」の観点から学ぶシリーズ「“働く”をマーケティングする」。今回から最終章である第4章「マーケティングを武器にする」に入ります。

■これまでの学び

第1章 あなたをブランド化する
望まない仕事の責任者に抜てき、このまま流されて大丈夫?
先行き不透明なキャリアアップチケット、つかむべきか?

第2章 相手の気持ちを読む
買いそうで買ってくれない見込み客の気持ちをどう読むか?
寝耳に水の契約終了、営業責任者のあなたはどうする?

第3章 ポジショニング
育休から復帰後、「好きだけどきつい」仕事に戻るべきか?
転職先の朝礼に意味を見いだせない、あなたならどうする?

第4章 マーケティングを武器にする
憧れの海外企業からの誘い、彼女を置いて日本を飛び出す?

(写真:PIXTA)

 皆さん、こんにちは。一般社団法人マーケターキャリア協会(MCA)理事の富永朋信です。

 日経ビジネス電子版でお届けしている「“働く“をマーケティングする」シリーズ、今回はいよいよ最終章です。題して「マーケティングを武器にする」。

【第4章】マーケティングを武器にする
お題(7)憧れの海外企業からの誘い、彼女を置いて日本を飛び出す?

 今まで本コーナーでは「あなたをブランド化する」「相手の気持ちを読む」「ポジショニング」という流れで、身近な事象を題材に、専門的な用語や理論をできるだけ振りかざさない形でマーケティングについて論じてきました。

 このように書くと、
 「……『相手の気持ちを読む』がマーケティングと関係あるんだっけ?」  と思われた方がいるかもしれませんね。

 「マーケティング」という言葉には、いろいろな団体・企業・マーケターがいろいろな定義をしています。「市場創造」「セールスを不要にする仕組み」などがよく知られているところだと思いますし、私は自分で「ターゲットの認知変容・態度変容・行動変容に影響を及ぼし得る全て」という勝手な定義を持っています。

 このようにマーケティングの定義は様々なのですが、多分その全てに通底している要素があります。それは「人間理解がベースにある」ということです。

 新製品や新サービスのお披露目でも、自分自身を意中の相手に売り込む場合でも、「マーケティング」を行うときは、その対象となる人に対して、何かしらの働きかけをして、その結果相手の認知・態度や、相手と製品(など)との関係性に変化を生じさせることを目指します。

 これを精度よく行うためには、人間に対してどのようなインプットをしたら、どのようなアウトプットが返ってくるか、という仕組みの理解が重要です。その意味で、人間に関する知識としての哲学、心理学、認知科学や、「個」の人間に加えて、「個」の集団である社会を扱う知識としての社会学、社会心理学、経済学、行動経済学などは、マーケティングととても密接に関連しています。

 筆者はこのような見方でマーケティングに接しているので、マーケティングを仕事にしか使わないのはもったいない、という考えを持っています。

 というのも、マーケティングを学べば学ぶほど、人間そのものに対する理解が深まり、組織や社会の中で周囲と関係を構築する際の考え方のベースが豊かになるからです。つまりマーケティングは、仕事以外のいろいろな局面で、あなたの意思決定やより良い選択を助けてくれる、強力な武器になる、というわけですね。

 さらに、意思決定やより良い選択を助けてくれる、ということはすなわち、マーケティングは人が生きていく中で、最も大切なことである「幸せ」を増幅する可能性を高めてくれる、というと大げさに聞こえるでしょうか?(少なくとも筆者はそう考えます)

 「どのようなこと・状態に幸せを感じるか」という問いを、人間理解の一端として常に持ち続けることができれば、その人はより良い人生を送ることができるという考えは、あながち外れてはいないと筆者は考えます。

 そこで今回はこのシリーズの集大成として、筆者の人間理解・人間観をベースに、「幸せとは何か」ということについて、マーケティング的な切り口で考えてみたいと思います。