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自分が望むキャリアを主体的に築いていくにはどうすればいいのかを、「マーケティング」の観点から学ぶシリーズ「“働く”をマーケティングする」。今回は第2章「相手の気持ちを読む」の2回目。前回の議論を振り返りながら、新たなテーマについても考えます。

(写真:PIXTA)

 皆さん、はじめまして。一般社団法人マーケターキャリア協会(MCA)理事の田中準也です。普段はインフォバーンという会社で取締役COO(最高執行責任者)を拝命し、企業のマーケティングのお手伝いをしたり、たまにビジネスを遂行する上で大事なことをガンダムに例えたりしています。

 まずは前回の議題を振り返りましょう。

【第2章】相手の気持ちを読む
お題(3) 【議論】買いそうで買ってくれない見込み客の気持ちをどう読むか

田中 準也
インフォバーン 取締役COO(最高執行責任者) 1990年クレディセゾン入社。その後ジェイアール東日本企画、電通、トランスコスモス、メトロアドエージェンシー、電通レイザーフィッシュ(現電通アイソバー)を経て、2015年インフォバーン入社。2017年に取締役に就任。2019年より取締役COO 兼 DIGIDAY[日本版]エグゼクティブアドバイザー。マスからデジタルまで精通し、オンラインとオフラインを横断する総合的なコミュニケーションデザイン及び新規事業開発・推進が得意。スマートフォンデバイスアプリケーションのプロデュースから、Web番組企画などのエンターテインメント領域、B2Bサービスデザインまで幅広く手がけている。

 皆さんはどのように考えましたか? まだ読んでいない方は、本記事を読み進む前に前回記事をご一読いただくことをお勧めします。

 先の記事へのコメントを見ると、案内している見込み客と担当者の信頼関係について言及されていた方が少なくなく、小手先のテクニックでどうにかなる話ではないと皆さんが感じているようでした。また、これまでの議論でも主人公に感情移入し、意見を表明しているのはとても素晴らしいと思います。

 では、私ならどうするか?

 私は30年近く広告業界にいますが、営業経験はそのうち8年と短く、プランナーやプロデューサーなどというポジション(サッカーでいうところの「1.5列目」と言えば一部の方には分かっていただけるかも)で仕事をすることが多くありました。なおかつ、不動産の営業はやったことはありませんが、皆さん同様にこのお題に挑戦してみます。

 まず、改めてまだ紹介できていない4件の候補物件を平等にご案内します。その上で、6件目の物件の「気に入った点」「気に入らなかった点」それぞれに対して、どんな「背景」や「文脈」があってそう発言したのかを、これまでの10件の案内の中での見込み客の発言と行動、そしてプロフィルを突き合わせながら整理します。想像力を発揮して。

 なぜ「間取りがよい」「庭が好き」と言ったのか?

 なぜ「ドアの素材が気に入らない」「家の中の段差がちょっと」と言ったのか?

 目に見える、すぐ分かる表層的な理由を挙げるのではなく、言動の背後にある気持ちを読まない限り先には進めません。

 「間取りがよい」と言ったのは、「急なママ友の訪問の際も片付けがしやすい」と感じたからかもしれません。広いキッチンに憧れていた可能性もあります。加えて「広いキッチンで動画を撮ってYouTuberデビューしてみようかな」と思っているのかもしれません。「ドアの素材が気に入らない」と言ったのは、そもそもドアの無い開放的な家を求めている可能性もあります。

 もちろん、根拠なく想像しても意味がありません。これまでに得た全ての情報を足したり引いたりして「背景」を想像していきます。そうすると、彼らが深層的に求める「ライフスタイル」が見えてくるのではないでしょうか。情報が足りなければ、どんな暮らしをイメージしているのか、改めて聞くことも必要です。これらを整理した上で、見込み客が望む「未来」を想像できるような物件を、私なりの目で選んでご提案してみたいと思います。

 もちろん、これで十分ではないでしょう。そうそう簡単に人の気持ちは理解できるものではありません。それでも気持ちを読むために、感じるために、対象者の言動をしっかり観察し、背景を想像し、こちらも相応の言動をすることで、ほんの少しだけ近づけるかもしれない。このことが大事なのです。

 少し、昔話をします。