行くも天国、戻るも天国

 結論をはじめに書くと、A君は公募に「応募すべきだ」と考えます。

 今の時代、会社に所属しているか否かにかかわらず、「個」として認知される時代だと感じます。どんな経験を積み、何が得意で、一緒に仕事をすることでどのようなパフォーマンスを発揮してくれるかというイメージを形成することはとても重要です。そんな中、A君は「店舗オペレーションのすご腕」として認知されており、これは本当に素晴らしいことだと感じます。

 一方でA君は、「店舗オペレーションを究めた先に一体何があるのか」という疑問を持っているのでしょう。この状態のままで能力に磨きをかけていくことはとてもつらく、吸収の速度も遅くなっていくのではないでしょうか。

 そこに出てきたマーケティング職という選択肢。A君はマーケティングに関して「少し詳しい素人」くらいでしょうが、モチベーションはものすごく高そうです。いざマーケティングをやってみれば、不慣れながらも結果を出すでしょうし、本人も楽しく働けると思います。

 また、マーケティング畑でずっと育ってきた人よりも店舗オペレーションに圧倒的に詳しいので、店舗での影響を見通したプランニングができるでしょう。マーケティングの部門にとってこれは大きな資産になり、この会社に新しいマーケティングのあり方をもたらす可能性もあります。これはA君にとってすごくハッピーなエンディングかと思います。

 一方、ネガティブなシナリオも考えなければなりません。A君はマーケティングに対して幻想を抱いている可能性が高いとも感じます。マーケティングは外から見ているよりも圧倒的に地味な職務が多く、世の中に施策をお披露目していくまでには星の数ほどの困難が待ち受けています。この仕事をしてみた結果、「こんなはずでは」と思うことは多々あることでしょう。憧れていたマーケティングの仕事に、心底嫌気が差してしまう可能性も否定できません。

 もし、嫌気が差したときは、また店舗に戻ればいいと思います。マーケティングを経験した視点から店舗を担当すれば、また新しい視点でオペレーションを組むことができるはず。その結果、そのまま店舗にいるままでは行わなかったようなチャレンジを、A君はどんどん進めていけるのではないでしょうか。

 結果として、A君の得意領域である店舗運営を、もっと深く愛することができるようになっているはずです。また店舗運営のセクションから見ても、一度マーケティングに浮気したA君ですが、その経験や視座の変化、モチベーションを踏まえれば、戻さない手はないと考えるでしょう。

 まとめると、A君は今、下記の3パターンの「ブランド」を持つことができる岐路に立っていると考えられます。

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