読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。今回のテーマは、企業が従業員向けに提供している「仕事と介護の両立支援」についてです。皆さんの体験談や悩みなど、ぜひコメント欄でシェアしてください・

リクシス副社長の酒井です。私自身が、10代の中ごろから今日まで、30年近く、親の介護と自分のキャリアを両立させてきました。振り返ってみれば、私の介護は、後悔でいっぱいです。そんな、私と同じような後悔をする人を減らしたいというのが、私がリクシスを起業した大きな理由です。
今回は、仕事と介護の両立で悩む方の相談をテーマに、皆さんと企業の両立支援の在り方について考えてみたいと思います。これは、ある大手メーカーで部長を務めている男性から、私たちに寄せられた悩みです。
議論のテーマ(8)
うちの会社は割と介護の支援にも熱心で、介護セミナーも毎年やってくれています。ただ、私のように親が遠方で一人暮らしをしていて、既に要介護認定を受けているような立場だと、こういうセミナーの話は一般的過ぎて、全く役に立たないなというのが実感です。
本当に知りたいのは、親に向いたデイサービスはどこかとか(親の住まいは本当に遠方なので選択肢なんてないのが実態なのですが)、月に何度も手続きやサポートのために片道4時間かけて帰省しなくてはならない現状を解決するために、代行してくれる人はいないのかとか、そういうことなのですが……。
従業員向け「仕事と介護の両立支援」では足りないもの
現在、多くの企業経営者が、自社の従業員が親の介護で疲弊し、業務のパフォーマンスが下がってしまうことを恐れています。2018年には経団連も「仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて」と題した提言をしており、介護問題の深刻化を警戒しています。今後、仕事と介護の両立は、経営課題として、さらに広く認識されていくことでしょう。
ただ、日本が経験している高齢化は、人類史上、初めて直面する社会問題です。前例がないため、国や企業による取り組みは完全に手探りです。そうした取り組みに、どれほどの効果があるのかは事例が不足しており、確かなことは言えません。企業の人事部は、そうした状況の中で、必死に従業員を支援しようとしています。
現時点で、企業が準備している仕事と介護の両立支援は、次の4点がセットになっていることが多いようです。
(1)親などの介護のための休業制度
(2)従業員向けの介護セミナー
(3)介護に関する啓蒙パンフレット
(4)介護相談窓口
一般には「こうした支援制度を上手に活用しましょう」といわれますが、そもそも上手に活用するとは、具体的にはどういうことなのでしょう。まずは、介護休業制度について考えてみましょう。この制度、実は「利用しない」ことがむしろ望ましい状況と言えます。なぜでしょうか。
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