(写真:PIXTA)
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 皆さんこんにちは。リクシス佐々木です。

 新型コロナウイルスの感染が小康状態となり、仕事の仕方も平時モードに戻られている方も少なくないのではないでしょうか? 一方で、在宅勤務による運動不足や間食の機会の増加で体重が増えた、俗に言う「コロナ太り」が話題となりましたが、その余波とも言えそうな「コロナ虫歯」も無視できないようです。

 以前、本連載でも、歯周病の予防は認知症予防のためにも、口腔(こうくう)ケアは重要とご紹介しましたが、ここ2年あまりの間に、歯周病がアルツハイマー型認知症にどう関与しているのかが明らかになってきました。今日はそのメカニズムについてご紹介します。コロナ禍の生活で、口腔ケアがおろそかになってしまったと思い当たる方にはぜひ、生活をリセットするきっかけにしていただけたらと思います。

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歯周病の歯茎からアルツハイマー型認知症の原因成分が

 2019年11月、九州大学大学院歯学研究院では、重い歯周病の人の歯茎にアミロイドβという物質が産生されているという研究結果を発表しました。アミロイドβはアルツハイマー型認知症の患者の脳に特徴的に見られる脳内老人斑を構成する成分です。さらに歯周病の原因菌(ジンジバリス菌)をマウスの全身に投与した実験では、肝臓でもアミロイドβが産生されていることも分かりました。

 これまで、脳内で作り出されていると考えられきたアミロイドβが、実は歯周病の原因菌によって炎症を起こした脳の外部にある組織内で作り出されていることが明らかになったのです。

 さらに、2020年には、脳の外部で作り出されたアミロイドβがどういう仕組みで脳内に取り込まれるのかも解明されました。実験では、歯周病の原因菌を3週間全身投与されたマウスの脳内では、アミロイドβを運ぶ役割を果たす物質が2倍に増え、脳内老人斑の主成分が10倍となり、記憶障害の症状が見られるようになったそうです。

 一連の研究から、歯周病がアルツハイマー型認知症の原因として働くメカニズムが示されました。同大学のプレスリリースでは、歯周病菌による炎症からアミロイドβが作り出されること自体を防ぐための薬や、脳外で作り出されたアミロイドβを脳内に取り込ませないようにする薬のように、アルツハイマー型認知症の発症を未然に防ぐための医療の可能性に言及しています。

 アルツハイマー型認知症は20年以上かけて少しずつ進行していくわけですから、その進行スピードを遅らせる医療の可能性がまた一つ増えたと言えそうです。

「医療」の関与が不要な予防は今すぐ実行可能

 ずっと以前から、重度の歯周病の有無、残存歯の数やかかりつけ歯科の有無など、口腔ケアの充実度が、認知症発症と相関があることは様々な研究から指摘されていました。

 しかしながら、実態としては、2016年の調査では、歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝の深さ)が4ミリメートル以上の人は50歳で5割を超えます。あらゆることに共通しますが、自発的な「予防」を実現する難しさを示していると言えそうです。

 ただ、メカニズムが明らかになってみれば、歯周病の予防によって、脳外でのアミロイドβの産生を抑えられれば、アルツハイマー型認知症の発症リスクは本当に下げられると確信できる段階になりました。

 ご参考までに、日本臨床歯周病学会が示しているセルフチェック項目をこちらでご紹介します。

  1. 口臭を指摘された・自分で気になる
  2. 朝起きたら口の中がネバネバする
  3. 歯みがき後に、毛先に血がついたり、すすいだ水に血が混じったりすることがある
  4. 歯肉が赤く腫れてきた
  5. 歯肉が下がり、歯が長くなった気がする
  6. 歯肉を押すと血や膿が出る
  7. 歯と歯の間に物が詰まりやすい
  8. 歯が浮いたような気がする
  9. 歯並びが変わった気がする
  10. 歯が揺れている気がする

当てはまる項目が
1〜3個:歯周病の可能性あり。
4〜5個以上:中等度以上に歯周病が進行している可能性あり。
とのこと。

 ただ、これらに当てはまらずとも、歯周病にかかっている人の大半が無症状ですので、少なくとも年1回の定期検診は受けておく方がよさそうです。

 歯科の予約が面倒、かかりつけ歯科自体をお持ちでない、一度は行ってみたものの、歯周病の治療が痛くて苦手という方もいらっしゃることでしょう。会社勤めの場合は、健康診断が年に1回ありますから、それと同じタイミングで予約を入れるとか、自分の誕生日に合わせるなど、何かきっかけを決めるのがよさそうです。

 今回は、ちょっと趣を変えて、老化予防や健康づくりに望ましいとされている「習慣」で皆さんが実行していることをぜひ、コメント欄でご紹介ください。その行動を習慣化するために、どのような工夫をされたかも合わせてご紹介いただけたらと思います。

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