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民間の保険を考える

 日本に暮らしている人であれば、40歳から強制加入となっている公的な介護保険をフル活用するのは当然です。しかしそれでも、在宅介護では月額7万円程度のお金がかかります。親にできるだけ元気でいてもらえれば助かりますが、ここは運の要素も大きく、たとえ親が健康を気遣っていたとしても、どうにもならない場合もあります。介護が必要になるかならないかは、自己責任とは言えない部分も多いのです。

 公的な介護保険で足りないのであれば、医療と同じように、介護についても、民間の保険を検討する必要があります。多くの人にとって介護は避けられない問題であるならば、民間の保険は、もっと広く、真剣に検討されてしかるべきです。

 実際に、民間の保険会社は、様々な介護関連商品を提供し始めています。現時点で、弊社が確認できただけでも、18の金融機関から27の介護に関する保険が販売されています。

 もし、まだ親が健常で、こうした民間の保険に加入していないのであれば、検討してもらう必要があるでしょう。また、40歳以上になっている読者であれば、自分自身の介護のために、こうした保険を検討してもよいかもしれません。

 介護保険は一時金での受け取りや、年金として受け取れる期間が10年といったものが中心です。介護に必要になった資金を全て保険でカバーするというよりは、所得、そして、貯蓄の取り崩しも合わせて、不足する分を賄うということを基本に考えたいところです。なお、中にはソニー生命の終身介護保障保険のように、要介護2以上の状態になり要介護状態が続いている限り、年金が受け取れる終身型もあります。

 以下に、支払額のシミュレーションができるサイトをまとめてみましたので、ご興味があったらご覧になってください。

 介護保険の保険料は、残念ながら決して安くはありません。しかし、ご家族の扶養義務が軽くなったタイミングで、生命保険からの切り替えを考えるなどの検討はあってしかるべきかもしれません。お金が必要になるのは、亡くなった後ではなく、亡くなる前だからです。

●介護保険の支払額シミュレーションができるサイト
・アフラック 「ちゃんと応える医療保険 介護EVER
・SOMPOひまわり生命 「笑顔をまもる認知症保険
・東京海上日動あんしん生命 「長生き支援終身
・明治安田生命 「介護のささえ

本当に限界という状況になったら

 既に、親の介護のために自分の人生が相当程度、犠牲になっている人の場合はどうすべきでしょうか。また、しっかりと準備をしたつもりでも、医療や介護に予想以上にお金が必要となった場合は、どうすべきでしょうか。

 本当に限界ということになった場合、民法(第877条)における「扶養の義務」について考えることになります。「扶養の義務」とは、親族に対して「自分と同じ程度の生活を保障する義務」のことです。これは、親子孫、兄弟姉妹が相互に負っている義務です。ただし、この「扶養の義務」には「社会的地位、収入等に相応した生活をしたうえで、余力のある範囲で」という限定があります。自分の生活で手いっぱいの状況で、親を扶養する必要はないと考えられるのです(厳密には家庭裁判所の判断になりますが)。

 そうして、親を扶養しないと決めた場合、親は生活保護を受給することになります。生活保護の受給者は、介護保険による介護サービスの利用にかかる自己負担部分も、生活保護からの給付(介護扶助)となります。そして、60歳以上であり、家族による援助を受けることが困難な人のためには、老人福祉法で定められた軽費老人ホームへの入居ができる可能性があります。

 実際に、資産がなく、身寄りもない高齢者であっても、生活保護を受給しながら介護を受けて暮らしています。もちろん、安易に生活保護を受給すべきではないという考えもあります。しかし介護は、決して安易ではありません。そして、厳しい介護を強いられる状況は、多くの読者にとって自己責任ではないのです。難しい判断であることは百も承知ですが、どこかで、頑張りすぎない意思決定を検討することも大事になるのではないでしょうか。

 最後に、母親の介護をご家族と離れてご自身で担われたご経験をコメントでお寄せいただいた方からのメッセージをご紹介しておきたいと思います。

石田修治
定年退職
 蓄えることよりも要介護状態にならないための食事や生活習慣、日常の運動の方法についてのほうがよほど役立つと思う。私は背中が極端に曲がって直立歩行が困難になった母を見ているので、自分はそうならないように腹筋と背筋のバランスや身体の柔軟性を保つように毎日ヨガをはじめとしたストレッチや早朝早足散歩、そしてジムでの水泳を日課とするようにしている。

 石田さんがお伝えくださった通り、健康で、自立した生活をできるだけ長く過ごせるようにするための準備が、ご自身にとっても、ご家族にとっても将来のご負担を減らすことにつながるのは間違いありませんね。

 介護が必要になることを前提とした話題をここ数回、ご紹介してきましたが、老化についての研究は日進月歩です。次回からはまた、老いに伴う体の変化について取り上げます。

「介護とお金」をテーマにこれまで皆さんと議論をしてきました。ご自身のご経験やお考えをシェアしてくださり、ありがとうございました。次回からのテーマは、老いに伴う体の変化です。お見逃しのないよう、シリーズをフォローしてください。