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親の介護のためにどこまで自分の人生を犠牲にすべきか

 まず、親の介護に必要となるお金は、原則として、親のお金(貯蓄や年金など)で賄うことが求められます。ここは大事なところですが、残念ながら、現実的な原則であるとは言えないのです。

 厚生労働省の『国民生活基礎調査』(2019年)によると、高齢世帯(世帯主が65歳以上)は、平均で1213万円の貯蓄があるようです。まず、平均で見ても、民間の老人ホームへの長期間の入居は厳しいことが分かります。

 ここで、平均を押し上げているのは、3000万円以上の貯蓄がある富裕層(10.8%)です。ちょうど真ん中に位置する中央値で見ると、貯蓄額は700万円程度となります。在宅介護においては、平均月額で7万円ほどかかることが分かっています。

 生活費のことを考えないで、介護だけでみた場合、700万円の貯蓄額は、1人の要介護者を、在宅介護で約8年間支えるだけで吹き飛んでしまう金額です。2人分となると、在宅介護でも全く足りません。半数の高齢世帯が、こうした残念な状況にあります。さらに、貯蓄が100万円に満たない高齢者も2割を超えているのです。

(参照:[議論]介護のお金、備えは足りる? 亡くなるまでの総費用を計算

 そう考えると、親の介護のために自分の貯蓄を切り崩す子供の姿は、珍しいものではなく、むしろ過半数となる可能性が高いわけです。そこで、どうしても考えなければならない問題は「親の介護のためにどこまで自分の人生を犠牲にすべきか」というものです。

 どこの親でも、口では「子供に迷惑はかけたくない」と言います。しかし現実には、それだけの貯蓄を持った高齢者は多数ではないと認識すべきでしょう。

 また、自分自身の介護についても、考えておく必要があります。親の介護にお金を使いすぎてしまえば、今度は自分に介護が必要になったときに、子供に迷惑をかけることになるからです。

 しかし、このご時世、そんなことが可能でしょうか。私もそうなのですが、団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)は、あと10年ちょっとで定年退職となります。この団塊ジュニア世代は、就職氷河期を経験している世代です。非正規が多く、貯蓄額も低いといわれています。

 それに追い打ちをかけるように、団塊ジュニア世代は、受け取れる年金も少なくなると考えられているのです。10年ちょっとという短い期間で、大きな貯蓄ができるでしょうか。そんな世代が、親の介護のために使えるお金など、どこにあるのでしょう。