読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。これまで「介護とお金」について考えてきました。
議論のテーマ(6)
仕事と介護の両立には、適切な介護サービスを利用することが大切というのはよく分かります。しかし、先立つものがないことには、サービスも利用できません。親がどれくらい老後資金を準備しているのかも正直言ってよく分からないので、自分の将来を考えると憂鬱になります。
今回は読者の皆さんからのコメントを踏まえ、介護とお金の厳しい現実を解説します。

リクシスの酒井です。これまで「介護とお金」をテーマに議論を展開してきました。読者の皆さんからも、多数のコメントを頂戴してきました。私自身、10代の頃から、かれこれ30年近く母親の介護をしています。これまでに介護に使ったお金は、正直、計算したくもありません。
事実として、人生の選択肢はお金のあるなしによって変わってきます。介護においても、それは同じことです。ただ、現実問題として、親の介護のために数千万円というお金を使える人は少数でしょう。では富裕層でなければ、打ち手はないのでしょうか。
読者の皆さんのコメントからは、厳しい現実に直面している様子が伝わってきます。
(※引用するコメントは読みやすさなどを考慮し、一部編集しています)
ダメおやじさんがおっしゃる通り、10年以上にわたって毎月50万円ほど使えれば、民間の立派な老人ホームに入居してもらいつつ、トラベルヘルパー(旅行に付き添ってくれるヘルパー)の力を借りて国内旅行を楽しんでもらうことも可能でしょう。ただしそれも、介護が必要な高齢者が1人の話です。両親の介護をしている場合は、単純にこれが倍額となります。
以前の連載でご紹介した通り、民間の老人ホームではなく、公的な老人ホームである特別養護老人ホーム(特養)であれば、入居費が月額15万円以下となる場合もあり、年金の範囲内で入居できる可能性もあります。しかし特養は、要介護3以上でないと入居できないだけでなく、30万人以上が入居の順番待ちとなっており、相当、運がよくないと入居できません(それでも順番待ちの列には加わっておくべきかもしれませんが)。
結論としては、相当な資産に恵まれている人でない限り、長期にわたって老人ホームに親の介護を丸投げすることはできないということです。それは、一億総在宅介護の時代を意味しているでしょう。在宅介護となることを覚悟するだけでは足りません。現実問題として、取り得るアクションについてのリテラシーが必要となります。
だから、人生のプライオリティーを明確にすること。お金が足りないときには、優先順位が低いものを切り捨てる冷酷さを持つこと。