読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。前回前々回から、「介護とお金」について考えています。

 今回は、「介護とお金」という話しにくい話題をいかに本人に切り出すか、について考えます。皆さんの体験談や悩みなど、ぜひコメント欄でシェアしてください。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 こんにちは、リクシス(東京・港)でCCO(チーフ・ケア・オフィサー)として介護の現場に携わっている木場猛です。

 前回前々回では、「介護にかかるお金」に関して、その費用の相場や、暮らし方として実際にどんな選択肢がありえるのか、について示しました。

 ここまで考えてきたテーマはこちらです。

議論のテーマ(6)
仕事と介護の両立には、適切な介護サービスを利用することが大切というのはよく分かります。しかし、先立つものがないことには、サービスも利用できません。親がどれくらい老後資金を準備しているのかも正直言ってよく分からないので、自分の将来を考えると憂鬱になります。

 いただいたコメントの中で実際の介護体験や現在の状況について具体的に共有してくださり、ありがとうございました。

 前回は、「どんな介護を望むのか」と「誰が費用を負担するのか」について、早い段階で話しておくことが介護費用に関する不安を解消するポイントだということをお話ししました。しかし、話したほうがよいと分かっていても、なかなか切り出せないのが現実です。

 今回はご家族で介護について話すタイミングや、切り出し方などについて、いくつかのケースを交えて紹介させていただきます。

親と介護の話をしている現役世代は少ない

 リクシスでは仕事と介護の両立支援プログラムの中で、ビジネスパーソンが仕事と介護の両立にどのくらい準備ができているのかを判定できるアセスメントテストを提供しています。2019年7月に、このアセスメントテスト回答者2500人分のデータを調べたところ、介護が始まる前の家族で、親御さんがどんな介護を望んでいるかを知っている方はほとんどいませんでした。

 この先1~2年で親御さんの介護をすることになる可能性が高い、という切迫した状況の方でさえ、本人の望む介護についてご存じない方が8割で、今どんな生活をしているのか(本人の1週間の予定)や、どのような経済状況なのかについても6割以上の方が知らないというのが現状でした。

本人の望む介護を8割の家族が知らない
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注:2019年「LCAT 仕事と介護の両立支援クラウド」の利用者(従業員数200~数万人規模の企業に勤める2500人) のうち、すぐに(今後1~2年で)介護が始まってもおかしくない人(908人)に対する調査結果
[画像のクリックで拡大表示]

先日、母が軽い脳梗塞になりました。
幸い日常生活に支障がないほど回復しましたが、何も準備をしておらず介護状態になったらどうしようとそればかり考えました。
介護の話など親が年老いていくのを認めたくなく、なかなか話しにくいのですが、今後も踏まえてよく話し合う必要があると思いました。

 調査の際に寄せられたコメントには、このようなものがありました。入院などの大きなきっかけがあって初めて介護について話すことになった、という方が多くいらっしゃいます。

 その他のコメントも見ていると、親御さんと介護の話をしていない方の状況は大きく3つに分けられるようでした。

(1)そもそも親子でのコミュニケーションが少ない
(2)まだ具体的になっていないのでイメージが湧かない
(3)介護が現実的になっており、話題に出しにくい

 それぞれのご家族により状況は大きく異なりますが、上記の3つの場合について、切り出し方やタイミングを考えてみましょう。

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