全4506文字

 読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。前回から、「介護とお金」について考えています。

 今回は前回の議論を踏まえ、実際に介護をする際には、本人にはどのような暮らし方の選択肢があり、費用は誰が払うのかについて、具体的な選択肢を考えます。今回も引き続き、介護にかかるお金について、皆さんのお悩みやご意見をコメント欄にお寄せください。

(写真:PIXTA)

 こんにちは、リクシス(東京・港)でCCO(チーフ・ケア・オフィサー)として介護の現場に携わっている木場猛です。

 前回は「介護にかかるお金」について、平均寿命や健康寿命から想定される平均介護期間や実際に介護をした方の介護費用の平均から、介護にかかる費用の相場を示しました。それに対し、読者の皆さんからは個人によりばらつきの大きい「介護にかかるお金」について、たくさんのご意見をいただきました。

 ダメおやじさん、K.Gotouさんをはじめ、個人的な体験を具体的に共有してくださいました。なかなかオープンに話し合う機会が少ないテーマのため、このようなご意見は私たちにとっても、とても参考になります。ありがとうございました。

 今回も引き続き、「介護にかかるお金」について考えたいと思います。前回、提示したテーマはこちらです。

議論のテーマ(6)
仕事と介護の両立には、適切な介護サービスを利用することが大切というのはよく分かります。しかし、先立つものがないことには、サービスも利用できません。親がどれくらい老後資金を準備しているのかも正直言ってよく分からないので、自分の将来を考えると憂鬱になります。

 まずは、私たちの元に直接寄せられた事例を紹介したいと思います。介護にかかるお金をどのように準備するのか、そして、まず考えなければならないことは何なのか。具体的な対応策・解決策を模索していきたいと思います。

「自分は男兄弟2人、弟も私も結婚しておらず、親が元気なうちにちゃんと話さなければと思い、弟と共に両親に、思い切って今後のことを聞いてみた。実は、親も意外とちゃんと準備していた。もちろん、この先、何があるか分からないけれど、一度、家族皆でこういう万一の話題を話しておけたのはよかった」

 この方のように、早い段階で家族、できれば関係者全員が一度でも介護について話し合うことができれば、その後の状況の変化にも対応しやすくなるでしょう。お金の問題については触れにくいと思っていても、この方のように親御さんがしっかりと準備しているケースも、実は少なくありません。

 ためらっていると、親御さんの体調が変化し、介護の段階が進んでしまうこともあります。「施設に入るか家族が見るか、1カ月以内に決めなければいけない」「実際に費用が発生してから親御さんの貯金や年金で足りないことが分かった」という切羽詰まった状況に直面してしまうこともあります。

 そういった余裕のない状態で初めて家族で話し合うと、お互いに言葉がきつくなってしまったり、意図が明確に伝わらなかったりして、トラブルになることが多くなります。微妙な話ほど、お互いに落ち着いた状態で話すのに越したことはありません。

 一方で、問題が起きていないのに先のことを話し合うのは難しいことです。

 まず、今の段階では、親御さんが元気なうちに、話し合っておくべき内容について、頭の整理をしてみましょう。

まず考えることは「どのような介護を望むか」

 通常、必要な介護サービスを決める際、最も影響が大きいのは本人の病状や介護度、認知症の有無などの「身体状況」に関することです。

 ただ、介護が必要になった段階で、あるいはもっと早い段階で家族が話し合う場合、親御さんの身体状況がどうなっていくのかを予測するのは現実問題として、難しいことです。少なくとも、高齢の方がどんどん元気になっていく、ということは考えにくいので、少しずつ必要なサポートの量が増えるという想定で考えましょう。

 その前提で、まず話し合うべきなのは、今後必要なサポートが増えていく中で、親御さんご自身が「どのようなサポート(介護)を望むのか」ということです。仰々しい質問に聞こえますが、親御さんと家族それぞれが「介護」と聞いたときにイメージしている内容をすり合わせる、という程度に考えていただいて構いません。

 そもそも何のイメージもできない、という方もいらっしゃるでしょう。まずは、実際にどんな選択肢がありえるのかをご紹介します。