読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。前回までは、健康寿命を延ばす食事について考えてきました。今回からは、「介護とお金」について考えます。

 皆さんは、介護にどれくらいのお金がかかるか、考えたことはありますか。親御さんやご自身に介護が必要になったときへの備えは十分でしょうか。

 今回は、介護の現場で20年近く活動してきた、リクシス(東京・港)の木場猛CCO(チーフ・ケア・オフィサー)と一緒に、介護にかかるお金について考えていきます。介護にかかるお金について、皆さんのお悩みやご意見をコメント欄にお寄せください。次回、皆さんのコメントを踏まえて、さらに詳しく解説します。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

議論のテーマ(6)
仕事と介護の両立には、適切な介護サービスを利用することが大切というのはよく分かります。しかし、先立つものがないことには、サービスも利用できません。親がどれくらい老後資金を準備しているのかも正直言ってよく分からないので、自分の将来を考えると憂鬱になります。

 こんにちは、リクシスの木場猛です。今回は、佐々木裕子酒井穣に代わり、CCO(チーフ・ケア・オフィサー)として介護の現場に携わっている私が、「介護にかかるお金」について、皆さんと一緒に考えていきます。

 私は、大学在学中から18年、ヘルパーとして介護現場で様々な課題を見てきました。その経験を、仕事と介護の両立に生かしたいと考え、リクシスで活動しています。

<span class="fontBold">木場 猛<br> リクシスCCO(チーフ・ケア・オフィサー)</span><br> 介護福祉士。東京大学文学部卒業。2001年の在学中から現在まで20年近く、現場の介護職として在宅介護に携わる。2018年リクシスに参画。介護を続ける中で学んだことは、雨が降ったら傘を差すように困ったときには当たり前に支えがある社会づくりの必要性。
木場 猛
リクシスCCO(チーフ・ケア・オフィサー)

介護福祉士。東京大学文学部卒業。2001年の在学中から現在まで20年近く、現場の介護職として在宅介護に携わる。2018年リクシスに参画。介護を続ける中で学んだことは、雨が降ったら傘を差すように困ったときには当たり前に支えがある社会づくりの必要性。

 平成22年(2010年)に行われた内閣府の調査では、家族に介護が必要になった場合の不安として、肉体的負担や精神的負担、時間的負担などが挙げられていました。その中で「介護に要する経済的負担」に不安を感じている人は、全体の54%と半数以上になっています。

 介護に実際どのくらいのお金がかかるのか、とても気になるところでしょう。介護期間はどれくらいの長さであり、介護費用はどれくらい必要なのでしょうか。使えるお金によって選択肢はどれほど変わるのでしょうか。「介護にかかるお金」のことで大変な思いをしないために、介護が始まる前に準備しておいたほうがいいことは何でしょうか。

介護費用は平均でどれくらい?

 介護にかかるお金は、主に以下の3つの費用の合計と考えられます。

(1)ヘルパーや施設介護などの公的な介護保険サービスを利用した際の
  自己負担金額(1~3割)
(2)民間サービスの利用や介護用品の購入にかかる費用
(3)住宅改修などの初期費用

 平成30年度(2018年)に生命保険文化センターが行った調査によると、(1)、(2)を合わせた介護費用の月額平均は7万8000円、初期費用として一時的にかかった費用の平均は69万円とされています。

 つまり、平均の金額から考えると、

 7万8000円×介護期間(月)+69万円

 が平均の総介護費用になります。

 それでは、介護が必要な期間はどのくらいになるのでしょうか。

次ページ 介護期間は「平均寿命-健康寿命」