読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うためのリテラシーを学ぶシリーズ。前回に引き続き、健康寿命を伸ばす食事について考えます。今回は、読者の皆さんからのコメントを踏まえながら解説します。

こんにちは、リクシスの酒井穣です。「老いに備える『エイジングリテラシー』講座」の第10回は、前回の記事「高齢者は『ぽっちゃり』がいい? 低栄養を招く3つの要因」に頂戴したコメントに回答しつつ、議論を深めたいと思います。
低栄養回避の試行錯誤が持っている大切な意味とは?
情報処理従事者であるK.Gotouさんは、食べずにどんどん痩せてしまう親御さんに対して試行錯誤を繰り返し、低栄養の状態が改善したり、また悪化したりといった日々の思い出を、コメント欄でシェアしてくれました。
低栄養が健康に良くないことは認識できたとしても、実際に食べてもらうためには様々な工夫が必要です。当然、成功する工夫は相手によって違います。また、同じ相手であっても、場合によっては同じ工夫が通用するときとしないときがあります。ですので「こうすればよい」という一般解はありません。
(※引用するコメントは読みやすさを考慮し、一部編集している場合があります)
恐らくは、K.Gotouさんが親御さんを心配する気持ちが、親御さんご本人にも伝わっていたのだと思います。工夫そのものの成功や失敗ではなく、温かいコミュニケーションが「幸せな思い出」をつくるのだと、あらためて気づかされました。K.Gotouさん、素晴らしいコメントを、ありがとうございました。
食欲を高めるために運動をすることも重要
Taroさんは、ご自身の経験も踏まえて、有益なアドバイスをいくつも提示してくださいました。もちろん、こうした工夫が誰に対しても有効かどうかは不明です。それでも、工夫に悩んでいる人にとっては、参考になることは間違いありません。
Taroさんのアドバイスのポイントは「血流をよくし、筋肉のレベルを維持するための運動」が重要であり、それが食欲の増進にもつながるという、非常に納得のいくものです。そもそも、健康寿命を延ばすためには運動が重要であることは、連載第2回「高齢者の引きこもりは死亡率2倍、避けるためにできること」でも取り上げた通り、明らかです。
また、Taroさんは、親のことだけでなく、自分自身の健康のためにも、食の量ではなく質にこだわっているところも、多くの読者の参考になるのではないでしょうか。
食べることは毎日のことだからこそ、日常生活の中に、低栄養を回避するための工夫を取り込むことが重要なのです。親に対して、好きなものを差し入れることも効果があるかもしれませんが、Taroさんは、好きなものを自分で選んで購入し、調理して食べるという一連の動作が大切であることを思い出させてくれました。 Taro さん、有益なアドバイスをありがとうございました。
ただ、あの当時のことは「幸せな思い出」であることははっきりしているのです。