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読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。前回までは介護と仕事を両立する場合の注意点などについて学びました。今回からは、健康寿命を延ばす食事について考えます。塩分や脂肪の摂り過ぎを気にする方も多いと思いますが、実はそれだけでは不十分。「低栄養」に陥ることのリスクも、同時に回避する必要があります。

リクシス(東京・港)の酒井穣副社長の問題提起をお読みいただき、皆さんのお悩みやご意見をコメント欄にお寄せください。次回、皆さんのコメントを踏まえて、さらに詳しく解説します。

(写真:PIXTA)

議論のテーマ(5)
最近、親の食が細くなったように思います。あまり無理に食事させるのもよくないのかなと思い、時々好きなものを差し入れるくらいしかできないのですが。何かよいサポートの方法はありませんか?

 こんにちは、リクシスの酒井穣です。シリーズ「老いに備える『エイジングリテラシー』講座」の第9回は、できるだけ自立した生活を営みながら長生きする、すなわち健康寿命を延ばすための「食事」について考えます。

 改めて言うまでもなく、「食事」は健康を維持するためにとても重要なファクターです。飽食の時代ですから、まず、私たちは「摂り過ぎ」が病気につながることを認識しなければなりません。例えば、「塩分の摂り過ぎ」は高血圧、胃がん、脳卒中などの原因になります。「脂肪の摂り過ぎ」は肥満、糖尿病、虚血性心疾患などの原因になります。

 同時に、エイジングリテラシーとして重要になるのは、加齢に伴う食欲の減退が引き起こす「低栄養」に関する認識です。現役世代であっても、ビタミンやミネラルの不足が骨粗しょう症や貧血の原因となることは理解しているでしょう。こうした「低栄養」が、高齢になってくると健康寿命に対してより深刻な影響を持つようになってきます。

高齢になってくると「ぽっちゃり型」のほうがいい?

 肥満度の指標として、BMI(Body Mass Index)を用いた測定が定着しています。実際に、健康診断で、BMIを気にしている人も多いでしょう。現役世代であれば、肥満は万病の元とされ、ダイエットが推奨されることもあります。

 しかしこれが高齢者になると、痩せているよりも、少しくらいなら太っているほうが、健康寿命が長くなるのです。高齢者の場合、現役時代の感覚でダイエットをしてしまうと、かえって、健康を損なう危険性があります。

 BMIと高齢者の死亡リスクの関係を表したのが次のグラフです。高齢者の場合は「痩せ型」だと、死亡リスクが高くなることが分かります。また、BMIが20以下になると、死亡リスクのみならず、要介護となる確率が統計学的に有意に高くなることが知られています。

BMIと死亡リスクの関係

 厚生労働省が発表した「平成30年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、高齢者(65歳以上)の女性の場合は5人に1人がBMIが20を下回り、「低栄養傾向の者」と分類され、健康リスクが高い状態になっていることが気になります。85歳以上になると、男性、女性ともにその比率は5%以上増えます。高齢者の「低栄養」の問題は、かなり深刻と考えてよいでしょう。