
こんにちは。リクシス佐々木です。
前回は「孤独」が健康に及ぼす大きな影響について、特に、我が国の高齢者の現状をみると近所付き合いも希薄でDXも進んでおらず、なかなか「つながり」を持ち得ていない方が多い、という実態についてお伝えしました。コロナ禍による外出自粛が長期化する中、この社会的孤立と孤独感の拡大は、世界的にも大きな問題になりつつあります。
今回は、皆さんに頂いたコメントを踏まえつつ、より豊かな超高齢社会に向けて、私たちはどう孤独感を克服し、つながりを確保していくのか、もう少し深掘りしてみたいと思います。
「孤独感」とは、自分が欲している社会的関係性と現状とのギャップに感じる「痛み」
Makitaさんがおっしゃる通り、WHOでは「つながりの希薄さ=社会的孤立」と、「実際本人がどう感じているか=孤独感」とは、別の定義がなされています。
・「孤独感」とは
自分が欲する社会的関係性が持てていない場合に感じる「痛み」のこと
・「社会的孤立」とは
社会的接点が非常に少ない状況を指し、結果的に孤独感を生じさせる可能性が高い状態のこと
客観的な社会的接点の多寡と全く関係性がないわけではありませんが、「孤独感」は多分に主観的なので、ある程度個々人によって感じ方が違う、ということです。
この点、いち早く「孤独担当大臣」を設置した英国は、この「孤独感」がどのように生まれるのか、またどういう人が孤独を感じやすいのか、そのメカニズムについて国を挙げて大々的な調査・研究分析をしています。その結果に幾つかの興味深いインサイトがありますので、ご紹介したいと思います。
●年齢:75歳以上のほうが、若い世代よりも孤独を感じるリスクが圧倒的に高い
●居住形態:介護施設などに住んでいる高齢者のほうが、在宅かつ地域コミュニティーの中に住んでいる高齢者よりも孤独感が高い
●マイノリティー:黒人、アジア人など、LGBTなど、マイノリティーグループの高齢者はより孤独を感じやすい
●その他:家族を介護している高齢者は、強い孤独感を抱きやすい
●関係性:孤独を解消するには、頼れる「深い」関係性に加え、「浅い」関係性も必要
「孤独感」のネガティブスパイラル
そして心理学者によれば、こうした「孤独感」は、「仕事を完全にリタイアした」「体が思うように動かなくなった」、「配偶者が病気になった」など、自分の生活に発生した環境変化やネガティブな事件がきっかけとなって引き起こされる場合が多く、その結果、周りの対応が変わったり、コミュニティーの中に属している感覚をもてなくなったりすることで、気分がふさいでしまう、結果、他者との接点や活動量がどんどん減っていき、ますます孤独を感じる、というネガティブスパイラルに入ってしまうことも多いのだそうです。
大事なのは、「顔の見えるつながり」――他人からの10分の電話、LINEとTwitterの違い
皆さんもご存じの通り、これからが本格的な超高齢社会となる日本は、2040年に75歳以上の世帯が1217万と全体の4分の1となり、75歳以上の一人暮らしも500万人を超えると予想されています。
既に世界中でも顕在化しているこの「高齢者の孤独問題」を、課題先進国に住む私たちは、どのように解決していくべきなのでしょうか?
kincyanさんが書いてくださっているようなSNSへの参加が、高齢者の孤独感にどのように影響するかについては、21年の3月に発表された東京都健康長寿医療センター研究所桜井良太氏らの論文によって明らかになりました。
この研究では、無作為に抽出した都民2万1300人にアンケートを郵送し、8576人を解析対象とし、主観的幸福感(WHO-5スコア)、悩みや抑うつ(K6スコア)、および孤独感(よく感じる~ほとんど感じないの四者択一)という3項目と、SNS利用頻度の相関性を解析しました。
分析の結果、高齢者(65歳以上の2985人)の場合、LINEの頻繁な発信・閲覧は、主観的幸福感の高さと関連していることが判明した一方、Twitterの頻繁な発信・閲覧をする層は、孤独を感じている割合が高いことが明らかになったのです。
次ページ 孤独は、高齢者だけに特有の問題ではない――全世代の問題として共感と関与を
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