「社会的孤立」は1日15本の喫煙と同等のリスクがある

 では適度な運動を行い、きちんと栄養を取っていれば健康寿命は延ばせるのか、というと必ずしもそうではない、というのが現在の医学的コンセンサスです。健康寿命に影響するもう一つの大切な要素、それが人・社会との「つながり」です。

 2018年、東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典研究部長の研究グループは、日常生活に問題のない健康な高齢者であっても、社会的な孤立と閉じこもり傾向がある人は、どちらも該当しない人と比較して死亡率が高まると発表しました。具体的には、次のような研究です。

 研究チームは、同居家族以外との対面および非対面(電話やメールなど)のコミュニケーション頻度が両者合わせても週1回未満の対象者を「社会的孤立状態」、普段外出する頻度(買い物、散歩、通院など)が2~3日に1回程度以下の対象者を「閉じこもり傾向」と定義し、高齢者の健康状態を6年間追跡しました。

 その結果は次のようなものでした。

 他のグループに比べて「社会的孤立」と「閉じこもり傾向」があるグループでは、追跡期間が長くなるにつれて死亡率が高くなり、調査開始から6年後には2.2倍となることが分かったのです(参照:「高齢期の社会的孤立と閉じこもり傾向による死亡リスク約2倍」)

「社会的孤立」かつ「閉じこもり傾向」の死亡率は2.2倍
「社会的孤立」かつ「閉じこもり傾向」の死亡率は2.2倍
出所:東京都健康長寿医療センター研究所
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 また、同研究チームは2019年に追加調査を行い、健康状態に問題のない高齢者の場合、本人の置かれている環境との関連では、独居といった居住形態ではなく、他者とのつながりが乏しい人(いわば、社会的孤立者)ほど身体機能低下、抑うつ、要介護状態になるリスクが高いことを明らかにしました。

健康状態の悪化リスクと「居住形態][社会的ネットワークの多寡」との関連
健康状態の悪化リスクと「居住形態][社会的ネットワークの多寡」との関連
出所:東京都健康長寿医療センター研究所
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 特に、誰かと同居しているのに他者とのつながりが乏しい高齢者の要介護認定率は、他グループの3倍。「人とのつながりの有無」が健康維持にいかに重要であるか、強烈に示される結果となりました。

 まさに、英国が2018年に「孤独担当大臣」を設置するときの提案書に書かれていた通り、高齢者の社会的孤立は、「1日15本の喫煙と同等のリスク」があるのです。

ご家族ができることは何か

 多くの皆さんのお悩み・不安にもある通り、新型コロナウイルスの感染予防のためとはいえ、高齢のご家族が家に引きこもりがちとなり、<運動量減少>と<社会的孤立>という、健康リスク悪化に大きな影響を与える引き金が同時に引かれてしまうことは、なんとしても回避したいところです。

 では、こうした状況下で皆さんにできることとは、一体何でしょうか。

 皆様の投稿にあったアイデアや事例などを踏まえながら、具体的にご家族のために起こせるアクションについて考えていきたいと思います。

 (※コメントの引用は読みやすくするため、表記や言い回しなどを一部変更しています)

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