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 「人生100年時代」と言われる中、高齢の親を抱えるビジネスパーソンも少なくありません。40代にもなると、「仕事と介護をどのように両立するのか」や、「自分自身の『老い』とどのように向き合っていくのか」という不安や悩みが出てくるのではないでしょうか。

 本シリーズでは、企業向けに仕事と介護の両立支援サービスなどを手掛けるリクシス(東京・港)の佐々木裕子社長CEO(最高経営責任者)と酒井穣副社長CSO(最高戦略責任者)を講師に、読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学んでいきます。

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(写真:PIXTA)

議論のテーマ(1)
新型コロナウイルス感染予防のための外出自粛以降、遠方に住む親の様子を聞くと、家に引きこもりがちになってしまっているようです。どうしたらいいでしょうか。

佐々木裕子(ささき・ひろこ)氏
リクシス 代表取締役社長 CEO。東京大学法学部卒。日本銀行を経て、マッキンゼーアンドカンパニーで同社アソシエイトパートナーを務める。マッキンゼー退職後、株式会社チェンジウェーブを立ち上げ、企業の「変革」デザイナーとしての活動を開始。変革実現のサポートや変革リーダー育成、個人や組織、社会変革を担いつつ、複数大手企業のダイバーシティ推進委員会有識者委員にも就任。自身の子育てに加え、愛知県在住の80代両親の介護も始まり、2016年株式会社リクシスを酒井と共に創業。多様性推進の目的と現実を理解しながら、画期的な両立支援の在り方を定義する。
酒井穣(さかい・じょう)氏
リクシス 取締役副社長 CSO。慶応義塾大学理工学部卒。Tilburg大学経営学修士号(MBA)首席取得。商社にて新規事業開発に従事後、オランダの精密機器メーカーに光学系エンジニアとして転職し、オランダに約9年在住する。帰国後はフリービット株式会社(東証一部)の取締役(人事・長期戦略担当)を経て、2016年株式会社リクシスを佐々木と共に創業。自身も20年に渡る介護経験者であり、認定NPO法人カタリバ理事なども兼任する。NHKクローズアップ現代などでも介護関連の有識者として出演。著書「ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由」

 はじめまして、リクシス(東京・港)という会社でCEO(最高経営責任者)をしている佐々木裕子と申します。4年ほど前、一緒に頑張っている副社長の酒井穣と2人で、高齢者人口が3割を超える超高齢社会を、豊かで幸せなものにしたい、という強い思いから、会社を立ち上げました。

 「老い」とは何か。「健康」とは何か。「幸せ」とは何か。「介護」とは何か──。私たちはこの数年間、様々な医療専門家、シニアケアの専門家と議論を重ね、内外の最新研究結果を調べ続けました。高齢者ケアの現場や、ご両親の心配をするビジネスパーソンの元へも、幾度となく足を運びました。

 その結果、私たちはある1つの確信を持つに至ったのです。それは、「情報」と「つながり」こそが、これからの時代の「幸せな長生き」を実現する鍵である、ということでした。

 実際、「老い」「健康」「幸せ」に関する科学的な研究は、ここ10年で飛躍的に進みました。かつて私たちの中で「通説」とされていた健康についての一般常識や、介護にまつわる社会概念が、場合によっては間違っていたり、逆効果であったりすることも分かってきました。

 同時に、科学技術の進歩、医療社会福祉制度の進化、民間企業の努力によって、これまで私たちの前に存在しなかった革新的な「解決策」や「選択肢」が、急速に増え続けているにも関わらず、いまだ一般にほとんどよく知られていない、という矛盾にも直面しました。

 「こういったことは、本来もっと早く、もっと多くの人が、手遅れになる前に知っておいたほうがいい」──。そう強く、本当に心から思ったのです。人類末到の超高齢化時代を生きていくうえでの、いわば「エイジングリテラシー」として。

 この連載では、皆さんにとって極めて身近な問題をテーマに、一体どんな選択肢があり得るのかについて、最新の研究結果や事例をご紹介しながら、皆さんと議論していきたいと思います。

 もちろん、実際には正解は1つではありません。身近なテーマであればあるほど、人生の数だけ、ご家族の数だけ正解があると言って過言ではないでしょう。

 ただ、最新の情報と共に、様々な選択肢の幅を知って頂くことで、「エイジングリテラシー」を多くの方に身近に感じて頂き、皆さんとご家族が「自分らしい選択」をするお手伝いができれば、幸いです。

 人である以上、老いは誰にでも訪れます。今、親御さんをはじめとするご家族へのサポートという意味合いで得た情報や知識は、数十年後にご自身の幸せなシニアライフを支える糧にもなるはずです。